現在、アルツハイマー病の進行を止める、もしくは若干の治療効果が期待されると
いう、新薬の治験に参加させてもらっています。
初めて大学病院で診察を受けたのが6年前。
当時は若年性アルツハイマーを診てくれる、近隣の病院は私には思いつかず、二人
で電車で行くと、片道2時間程かかる、都心のこの大学病院に通いました。
最初の1~2年位は、診察の他に色々な検査などがあったので、1~2ヶ月に一度は
通っていましたがその後は3ヶ月に一度の診察で、特になにもなければアリセプトを3
か月分頂いて帰るだけになっていました。
今は、車で通っています。
電車だと、トッピーが人疲れすること、車なら二人でワイワイしゃべったり、歌ったりし
ながら行けるのと、帰りに実家の両親の所に寄るのに便利なのが理由です。
アリセプトをもらうだけなら、近くの病院でも良いのは分かっていました。
休みを1日つぶして、交通費もかかる。
でも、病院を替える気にならなかったのは、最新の治療に一番近いのはここだという
思いがあったからでした。
それには、「治験」も含まれていました。
待合室には、いつも「治験に参加しませんか」のポスターが貼ってあります。
随分前に、主治医の先生に治験について尋ねたときは、今はないようなことでそのままになってしまいました。
そして、2009年の春に主治医から治験に参加しませんかという話をいただきました。
今回、参加しているのと同じ薬の治験でしたが、その時は、アルツハイマーになりやすい遺伝子型の人が対象でトッピーは違ったので、参加できませんでした。
2009年の秋に、再び主治医から、今度はアルツハイマーになりにくい遺伝子型の人が対象の治験が始まるとい
うことで、お話がありました。
主治医のほかに治験コーディネーターの薬剤師さんからも、詳細な説明を受けました。
家に帰ってから、何日も、何日も、何度も、何度も、トッピーと治験に参加するか話し合いました。
パンフレットには多くの参加資格が列挙されています。
○過去にアルツハイマーの治験に参加したことがない方
○アリセプト以外の治療薬を服用していない方
○介護者と同居し、介護者も全ての日程に本人と同伴できる方
○日本語の話せる方
その他、いろいろ・・・・・
トッピーは、私の決めたことに無我に反対することはほとんどありません。
30年間いつも、私の願いを聞いてくれてきたように思います。
でも、今回はトッピーのことです。
トッピーの人生の中の、決定を求められることです。
治験とは何かから始まり、40%は有効成分の含まれていないプラセボであること、
色々な検査で病院に行く回数が増えること等等・・・
私は、最初、アリセプトも飲みながら参加できる治験なので、これで新薬も効果があ
って進行が止まるか多少は改善されるなら参加しない手はないと思っていました。
でも、トッピーと何度も何度も話しているうちに、私の気持ちに変化があらわれました。
プラセボだと、当然だが新薬が効果のある薬であっても、その恩恵は受けられない。
もしかしたら、プラセボ投与になるかもしれないけど、誰かが参加しなければ新薬は出来ない。
どちらも、新薬開発という観点からは同じく大切なのだ。
だから、「治験」に参加することは社会貢献なのだ。
この病気になったのは、とてもとても残念なことだったかもしれないけれど、役立つ
時が目の前に来たのだと。
今回の治験は以前に「治験」に参加したことのある人は参加できないという条件がある。
そうではない、「治験」もあるのだろうが、これが最初で最後の「治験参加」になるかもしれない。
私たちはすでに、アリセプトの恩恵にあずかっている。
6年前、アリセプトがなかったら、今の暮らしはもうなかったかもしれない。
アリセプトがこうして多くの人に飲まれるようになる前にも、治験があったにちがいない。
このチャンスを、生かして誰だかわからない治験にかかわったすべての人にありが
とうを伝えられるのではないかと思うようになりました。
トッピーとは本当に何度も話し合いました。
「私」ではなくトッピーの決定であると「私」が確信できるまで。。。
トッピーは「やる」と。
何度話し合っても、「やる」と。
プラセボかもの話をしても「やる」と。
そして、「つまり、モルモットだな」と。(笑)
「そうね、どうせなら、いいモルモットになれるといいね」(笑)
久しく「社会」と距離を置いていたトッピーの人生が、誰かの役に立つことで意味を持
つ。
トッピーには、それは嬉しいことなのだろう。
そう、私は信じました。
今回の治験は来年の、8月まで続きます。世界中で1000人位参加しているそうです。
同じ薬の治験で既に終了したものや、現在進行中のものに参加している方は世界中でさらに2000人位おられるそうです。
これが、この薬の最後の治験で、来年8月に終了し、大きな問題がなければ国(厚生労働省)への申請という運びになるそうです。