素敵な宇宙船地球号

[第484回] 7月1日 23:30~24 [第484回] 7月1日 23:30~24:00放送 10周年スペシャル Vol.4:00放送 10周年スペシャル Vol.4


中央アジア・カザフスタン・ウズベキスタンにまたがるアラル海は、世界第4位の大きさを誇る内陸性の塩湖でした。


しかし、1960年代からすさまじい勢いで干上がり続け、今や4分の1にまで縮小、今後10年ほどでほぼ消えてしまうと言われています。


縮小の原因は旧ソ連時代の大灌漑事業により、アラル海を支えていた2つの大河の水を農地に奪われていたことです。


そして干上がった湖底から大量の塩と砂塵が風によって運ばれ周囲数百kmの範囲で砂漠化を進行させているのです。


前回2002年の放送で取材した人たちは今どうしているのでしょうか…。

砂漠化で家が埋もれてしまった元漁師アフメットさん(当時74歳)を訪ねました。


あれから5年、家を訪れると彼は2年前に亡くなり、息子とその家族5人が今、アフメットさんの家を守っています。

彼らの暮らしぶりを見せてもらいました。


今、彼らはささやかな牧畜で生計をたてています。

8頭の牛と20頭のヤギ、これが一家の全財産。

エサとなる草は砂漠の中にはごくわずか。

乳の出も少ないと言います。

現金収入は家畜を売る以外にはなく、しかし家畜がいなければ生きていけない先の見えない日々を送っているのです。


前回、植林で砂漠化を止めようとしたリリア博士にも会いに行きました。サクサウールという乾燥に強い潅木が茂みを作っていましたが、今は一本も残っていません。

住民が貧困のため、冬に薪用にすべて切ってしまったのです。

植林活動の壁は住民の貧困なのです。


今、街に残っているのは行き場の無い人々。

健康被害も深刻化しています。
アラル海周辺は絶望的なのでしょうか…。


アラル海は縮小し、大アラル海と小アラル海に分断されました。

注ぎ込む川を失った大アラル海は10年以内にほぼ干上がると予想されています。

2002年に出会った小アラル海で漁を続けるクドゥルバイさんを訪ねました。


当時は川の水量が足りないため、塩分が強すぎ、カンバラという一種類の魚しか獲れなくなっていました。そこでカザフスタン政府は川の水を無駄なく小アラル海に導くためのダムと水路作りに取り組みました。

しかし、砂で築いたダムは強風でたちまち決壊、失敗に終わりました。


しかし、アラル海の問題は世界的な環境問題だと、国連がカザフスタン政府に協力、2005年、28億ドルをかけたコクアラルダムが完成したのです。

今、塩分濃度はダムができる前の4分の1にまで薄くなりました。

果たしてこの海から消えた100種類以上の魚は戻ってくるのでしょうか。


クドゥルバイさんに会い、漁に同行すると5年前にはいなかった魚が数匹網にかかっていました! 

コイやフナなどいろんな種類の魚が戻ってきたのです。


水位は1mぐらい上がり、湖岸は20mぐらい村に近づいてきたそうです。
幼い頃から父の苦労を見てきた14歳になる息子は言います、「将来、漁師になりたい。
アラル海で父と一緒に暮らしたいから」と。


20世紀最大の環境破壊、アラル海。人々は今も無謀な自然改造の付けに苦しみ、世界では同じような悲劇が繰り返されています。

しかし、棄てられた海に世界の手が差し伸べられたとき、アラル海の再生が始まりました。

復活させるのもまた人間なのです。






ナレーター:古谷 一行