「……という訳でぇ、キョーコちゃんが幸せな未来を描く為のお手伝いを提案したいのぉ☆」



「……相変わらずいきなりですね、和泉さん。
あ、今日のオススメケーキをアイスティーとセットで。」



前半は真正面に座り目をキラキラさせている年上の友人に、後半はオーダーを取りに来た喫茶店の店員に向けながら、苦笑しつつ一体何が“という訳で”なのか訊ねるべく和泉の真向かいに腰を下ろしたのは、守護者の一件のあらましを聞いた和泉が詳しく話を聞きたくて接触を計り、その後意気投合、年齢差はあれど良き友人としてのポジションを確立した、来春には大学卒業ほぼ確定、進路も並み居るライバルを見事蹴散らしLMEに入社内定をがっちり取った将来有望な女子大生、笠井 有里子であった。



「また勢いで来ちゃったんですか?
和泉さん遣り手なのに変に突っ走っちゃうトコありますよね~。
ま、それも和泉さんの良いトコですけど。
…ところで何が“という訳”なんですか?
和泉さん自分の中で盛り上がってて気が付いてなかったみたいですけど、私の顔見るなり“という訳で”でしたからね?
全く意味分かりませんでしたよ?
まぁ京子さん関連の話なのは、和泉さんの顔見れば直ぐに分かりましたけど。」



すっかり和泉の性格を認知した風に笑う有里子に、どっちが年上だか首を傾げたくなる表情を浮かべた和泉だったがそんな事は全く気にすること無く、すぐにニコニコと話し始めるのであった。




「…でね、まぁあのファンの集いがあった後からその彼のマネージャーから言われてはいたのよ。
見た目はともかく中身は純情恋愛初心者な彼に初恋を成就させてやりたいから協力してくれって。」



「へ~…。
流石はあの社長さんが束ねる事務所ですねぇ。
所属している俳優やタレントの恋愛OKなんて…。」



感心しながら運ばれてきたケーキを頬張る有里子に、和泉はチッチッチ、と一本立てた指を左右に振って否定した。



「違うわよ有里子ちゃん。
うちの事務所は恋愛OKじゃないの。
恋愛“推奨”なのよ。
モットーは【命短し恋せよ幾つに成ろうとも、総ては正しき愛の為に!!】よ。
でなきゃ京子ちゃんの為にラブミー部作ったりしないと思うもの。
あの社長の元働いていれば自然と応援する側になっちゃうもんなのよね~、これが。」



…それは毒されてると言うべきだと内心思いながらも、近い将来その仲間入りする予定の有里子としては沈黙は金であると笑ってやり過ごした。



「…で、肝心なとこ訊きたいんですけど、その恋愛初心者な純情青年って誰なんですか?」



見た目に反比例な純情さって事は外見百戦錬磨なヒトなんでしょと笑う有里子に、和泉はキョロキョロと辺りを見回してからチョイチョイと手招きして顔を寄せると、とんでもない爆弾を落っことした。



「…驚くわよぉ…?
その恋愛初心者のヘタレな純情青年ってねぇ…いい男俳優ナンバーワンで名を馳せてる、あの、【敦賀 蓮】なのよ!」



「………へ?
え、ええええええっ!?( ; ゜Д゜)」



あまりのビックリネタに思わず立ち上がった有里子に、和泉はさもあらんと苦笑しながらも腕を引っ張り元の椅子に座らせると、有里子の声に驚いて自分達に目を向けた周りに騒がせてすみませんとペコペコと頭を下げた。



「……落ち着いた?」



あまりの爆弾ネタにアワアワと狼狽えまくる有里子に和泉はアイスティーを押し付け、とにかく飲んで心を落ち着ける様に促していた。



「………はぁ。
な、何とか…。
でもホントに意外でした。
まさかあのモテ俳優ナンバーワンの敦賀 蓮がそんな…。」



結構な恋愛遍歴あると思ってましたと困惑気味な有里子に和泉は再び苦笑しながら内情を暴露した。



「…まぁ確かにね、今まで一度も恋人がいなかった訳じゃないらしいわよ。
ただ、告白されたから付き合う、それだけだったらしいし…平たく言えば“来るもの拒まず去るもの追わず”みたいな?」



だから自分から女の子を好きになったことなくて、京子ちゃんが初恋なんですって、可愛いモンよねとサラッと宣(のたま)う和泉に、有里子の眼は点になっていた。


言われてみれば確かにあの容姿。
ならば当然、砂糖に蟻が群がるかの如く異性から言い寄られていただろう事は想像に難くない。


そして有里子は同時に気が付いた。


芸能界という特殊な世界に於いて、あれほど騒がれる立場に在りながら蓮という男にそういう話題は未だ皆無であるという事実。


あのローリィの性格を鑑みるに、真実恋愛話があるなら大々的に発表しかねない筈がそれもない。


余程ガードが固く異性のあしらいが上手いと見える。


しかしいくらあしらいが上手くとも、ここまでそんな話題の一つも出てこないなどあるだろうか。



「……あの和泉さん?
その話、宝田社長を通した方が良いんじゃないですか?
あの日本屈指のイケメン俳優の恋バナなのに、恋愛大好きな宝田社長が出張って来ないなんて何かあると思いませんか!?
それに彼の想い人が京子さんだとしても、京子さん自身の気持ちが彼に向かないとこの話進めようがないんじゃ…。」



有里子に指摘され、和泉は確かにと頷いてからしばし考えに耽っていたが、徐にバッグからスマホを取り出すと何処かに連絡を取り始めるのであった。











ふふふ…(^_^;)

またしても話が長くなるぞこれは…。(>_<)


だらだら駄作物書きに愛の手を~|-orz