電話を切られたローリィは早速事の次第を全員が把握する必要があると判断し、再び全員に無茶振りをぶちかましていた。



その無茶振りを受け、さらに数日後ローリィ宅の応接室に敷かれた巨大ラグの上には死屍累々の体(てい)で転がる見慣れた顔がずらり。



「………た、堪らん…。
毎回こうも無茶振りをされたら身体が持たねぇ…。」



「……まったくです。
こちらのつごうはおかまいなしですもんねあのかた…。」



「…気をしっかり持て緒方くん。
魂が八割あっちに行きかけてるみたいに目が死んでるし言葉も変に弛いぞ~。」



「仕方ないでしょ新開さん。
10日は掛かる筈の仕事を一晩で仕上げて来いなんてとんでもない無茶振りを本気で仕上げて来る啓文も啓文だけどね…。
私は後回しにできそうな分は完全後回しで何とか前倒しできるものを徹底的に繰り上げ捲って時間空けて来たわよ…。」



それでも2日は徹夜したけどとぼやきながら、春樹はバッグから出した化粧ポーチで自らの目の下の隈と格闘していた。



「お~、悪かったな。
何しろ怒れるお姉ーちゃん達に手綱つけにゃ~暴走されかねん状況だったんでな。」



「…たからだしゃちょう、それもひかひへぼくにょとこのさつえいすたっひゅとひとうさんのことではありまへぬか。」



「…呂律(ろれつ)が回っとらんし目が虚ろだぞ緒方くん。
まぁ間違っちゃおらんが。
緋堂くんは有名人だから皆知っとるだろうが、他の面子は知らんだろうから紹介しとかんと何かしらの誤解を招きかねん。
彼女らが加わった経緯を説明した上で今後どうするかを話し合う必要があると判断したから招集かけたんだよ。」



とはいっても多忙なメンバーのスケジュール併せるの難しいから今日まで待ったんだぞといけしゃあしゃあと宣(のたま)うローリィに恨みがましい視線を向けてしまいたくなるのをこらえつつ、一同はふらつきながらも用意されたスツールに腰を下ろした。



「…さて、では改めて紹介しよう。
女優の緋堂 誓子くんと緒方君の映画の撮影スタッフの面々だ。
例のあのガキの所業をそりゃもう見事な手腕で京子の口から根掘り葉掘り訊き尽くしたっつー強者だぞ。」



紹介されたのは誓子を筆頭にメイク、スタイリスト、撮影助手にタイムキーパー等々年齢も上は50代から下は20代後半まで総勢8名。



「…あらあら、この中じゃ私が一番年上なのかしら?
でも、この業界じゃなかなか指折りな有名人が揃ってるのねぇ♪
あたしたちの緒方監督は勿論だけど…CM制作分野じゃ新進気鋭の有望株の若手監督として有名よね、そこのワイルドなコ。
確か黒崎…潮さんだったかしら?
それにそちらのお嬢さん、クイーンレコードの麻生 春樹さんでしょ?
若いけどかなりの実力派だってあたしの耳に届いてるわよ。
あらあら、それに新開 誠士監督まで?
まあ、そうそうたる面々じゃないの。」



「若輩者の私などを大女優の緋堂さんがご存知でいらっしゃるとは…恐縮です。」



恐縮しきりな春樹に誓子はカラカラと笑い飛ばして見せた。



「この業界長いとね、それなりの人脈ってモンがあるから、情報も結構入ってくるってことなのよ。
業界一緒でもジャンル違えば顔合わすなんて滅多にないけど、それでも名前が耳に入ってくるってことは、みんなそれだけ注目されてるってことよ。」



注目に恥じないように頑張りなさいと言われたようで、全員がシャキッと背筋を伸ばした。



誓子はそんな若者たちを姉のような眼差しで暖かく見つめて頷いた。



「済まんな緋堂くん、実はこのメンバー、一人欠けとるんだ。
この前緊急打ち合わせした時の皺寄せがまだ残っててな、どうひっくり返っても今日の集まりには来られなかった奴がいるんだ。
ま、面識は有るんじゃないかな?
うちの蓮のマネージャーやってる、社 倖一って奴だ。」



「…あぁ、あのコ?
いつも敦賀くんと一緒の、モデルでもやってけそうなメガネのコよね?
……何だか繋がりが分かりにくいわねぇ。
彼は一体なに繋がりなの?」



誓子の言葉に不敵に笑うローリィと苦笑するメンバーに、誓子はまた首を傾げたが、事情を聞くにつれそれは楽しそうだと目をキラキラと耀かせた。



「ふ~ん…。
京子ちゃんと敦賀くんてそういう感じなの。
うふふ、これは私達緒方組が一肌も二肌も脱がなきゃあ♪
やるわよ監督!!」



「………え、え?
な、何を!?( ; ゜Д゜)」



「とーぜんじゃないのっ!!
今一番近くで二人を見てる私達こそが、両片想いな若い二人の手助けをしないで何とするって事よ!!
良いわねみんな!!
自覚している敦賀くんはホンの少しの後押しでいいけど、自覚してる筈なのに後退りしちゃってる京子ちゃんは退路を断たなきゃ後ろ向いて逃げちゃうわ!!
逃げたりしたら京子ちゃんは心の底から笑えなくなっちゃう。
幸せになれる子が、いいえ、今まで決して幸せとは言えない人生を歩んできた子が、これ以上後ろ向きになっちゃダメ。
そのためにも周りに居る彼女を見守って育てていこうと決めている大人である私達が逃げ道塞いだ上でばーんと背中を押してあげなきゃ!!」



緒方組スタッフも握りこぶしでうんうん頭を上下させて同意する中、既におばちゃんズのパワーにドン引きな若手メンバーは主導権が嬉々として話し合うローリィと緋堂以下おばちゃんズに完全に移った事を実感したのであった。











またまた間が空いております!!(ToT)


も~~スライディング土下座が、ぺったんこないりるになりそうです…(>_<)