メロキュン卒論テーマに作ってみました。
……しかし甘くなったかな!?
桜舞う苑に
その日の撮影が急に延期になったのをキョーコが聞いたのは、ロケ現場に到着しても誰一人おらず途方に暮れて事務所に確認の電話を入れた午前8時の事だった。
『済まん最上くん!!
連絡が遅れちまった。
今日の撮影、今朝になって3日後に延期になったと言いたかったんだが…まさか…。』
「…はい、そのまさかでして…いまロケの現場まで来ちゃってます。
…自動的に今日のお仕事、これでお仕舞いです。
そういう事ならこのまま事務所に戻ってラブミー部のお仕事をしましょうか。」
『あぁ、いいよいいよ。
たまにはそのまんまオフにしてしまいなさい。
ここんとこ丸一日オフなんて取れなかったんだし、ゆっくりしなさい。
スケジュールはあとで明日の分をメールしておくからな。』
椹の一方的な休暇命令を受け取り、キョーコは一人ポツンと佇んでいた。
(…さて、どうしよう…。
驚異的に珍しく学校も仕事もなし…。)
生まれてこの方、暇とはまるで無縁な人生を歩んできたキョーコにとって唐突なオフは困惑しか招かぬもの。
(取り敢えず気候も良いし…一回り散歩してみようかな…。)
都心から少し離れた場所にある大型公園の案内板を眺め、キョーコはぐるりと一周してみようと歩き出した。
「……えっ!?
キョーコちゃん!?」
見事な桜並木が目に入って来たところで、キョーコは聞き慣れてはいるがこんな場所で聞くはずのない声に呼び止められて振り返った。
「や、社さんっ!!
ど、どうしてこちらに?
あっ、お、おはようございますっ!!」
突然の遭遇にも決して挨拶を忘れない礼儀正しさに微笑ましいと思いながら近付いた社は、同じようにおはようございますと返しながら今日のキョーコのスケジュールをさりげなく聞き出していた。
「珍しいね~。
…あ、そうだ。
久し振りに見学する?」
願ってもない社の申し出に両手を挙げて即答しようとキョーコが口を開こうとしたのと同時に、スタッフが社に駆け寄ってきた。
「敦賀さんのマネージャーさんっ!!
すみません、ちょっと…。」
幾分顔色を悪くしたスタッフのただならぬ様子に、社もキョーコも何かトラブルが起きたことは想像できた。
…が。
「………ほぇっ!?」
気が付けばあれよあれよと話は進み、キョーコは急病で倒れた女優の代役としてロケバスの中でメイクを施されていた。
「きゃ~(。≧∇≦。)
こんな形で京子さんのメイクを担当できるなんてぇ~っ♪」
「業界じゃ素材として最高のモデルだって、裏から争奪戦になってるもんね~。」
最高に耀かせるわと意気込むスタイリストとメイクアップアーティストに苦笑しつつも、キョーコは《京子》として突如舞い込んだ仕事の内容に意識を集中させるのだった。
「……びっくりしたよ。
急な代役の筈が直ぐに来たっていうから誰かと思えば、まさか君だったとは…。」
嬉しい誤算でこういうの、確か故事で“人間万事塞翁が馬”っていうんじゃなかったっけ、と満開の桜を見上げながら笑う蓮の腕の中で、キョーコもまたクスクス笑いながらそうですねと甘える仕草をした。
シチュエーションとして恋人の雰囲気を出す事を許された二人は、実生活さながらの甘い雰囲気を周囲に撒き散らして二人だけの世界に入っていた。
(…こりゃ公表する気満々だな。)
秘密裏に交際スタートしてはや1年。
既に女優としても潰されないだけの実力と、大物からも可愛がられる礼儀正しさから、マスコミに叩かれる事もないだろうしなんら問題もないと、社長が大々的に発表したがっているのを知っていた社は、二人の成り行きを見守ることにしたのだが…。
(………何やってんだか。
…おいおいおいっ!!
…って、ちょ、ちょっと~っ!!)
恋人同士の甘い雰囲気を醸し出してくれと言われた二人が、小声で何を話していたのかまでは分からなかったが、蓮がキョーコの耳元で何か囁き、掌に握り込んでいた何かを見せているのは分かった。
そこまでならただの仕事上の演技だと誤魔化せたのに、頬を染めたキョーコが小さく頷いた途端とんでもない勢いで蓮がキョーコを抱き締め、唇を重ねたからその場に居合わせたスタッフ一同の驚愕たるや押して知るべし、である。
「やっ、社さんっ!!
ちょ、ちょっとあれっ…!!」
「…あ~、多分二人だけの世界に入っちゃって仕事を忘れてますから。
カメラ止めてください。
…おーい、蓮、キョーコちゃん。
続きはちゃんと仕事を終えてからやれ~。
今は仕事中だぞ~。」
桜舞い散る樹の下で濃厚な接吻を交わす二人に狼狽えるスタッフを余所に、最早見慣れたと言わんばかりの態度で注意する敏腕マネージャーを、これまたスタッフ一同の驚愕の視線が包んだ。
社の注意に我に返った二人が慌てて離れるも、嬉しさのあまり頭に花が咲いたかの様な浮かれきった様子の蓮と、衆目のある中で素に戻ってラブラブっぷりを自ら暴露した事に気付いて、羞恥のあまり頭に血が昇って卒倒したキョーコに、一同は生暖か~い目を向けるしかなかった。
……結局事が収拾し、落ち着いた二人がキチンと仕事をこなし撮影が終了したのは夕方になってからだったが、その時の撮影秘話が暴露されたのは暫く後の二人並んでの金屏風前であったのは言うまでもない。
~~あ゛~っ。ギリギリ駆け込み卒論なのに纏まりがなぁいぃ~っ!!(ToT)
……こりゃまた書き逃げだわ。(脱兎)(((((((・・;)
皆さんすんませ~ん!!