「…という訳でして。」
時間の都合上昼間ざっとしか説明出来なかった分を、夜スケジュールを無理矢理空けて時間を作った上で直談判してキョーコに蓮の夕食の相手を頼んだ社は、緑川に食事をご馳走しながら滔々と説明した。
話を全部聞いた和泉は、盛大な溜め息を吐いた後、テーブルに頬杖を突いて苦笑してみせた。
「驚いた…“敦賀 蓮”のイメージ総崩れだわ。
社長もよくそんなヘタレを放って置けるわね。」
「…放って置ける訳無いじゃないですか。
まぁ楽しんではいるでしょうが…。
何しろ相手が恋愛拒否症のラブミー部員のキョーコちゃんですからねぇ、並の手じゃ通用しません。
蓮のヤツがストレートに行っても曲解されまくりです。」
「…で?
そこまで話したからには何かあるんでしょ?」
薄々気が付いていても、和泉は社の口からはっきりと聞く必要があると思った。
「お願いします、緑川さんっ!!
あいつの初恋、成就させてやりたいんです。
それにキョーコちゃんにもラブミー部員を卒業して、もっと大きく伸びて貰いたいし…。
協力して下さい!!」
あ、やっぱりと納得した和泉は社に幾つか自分が知らない疑問点を投げ掛けた。
その答えの中にはキョーコファンとして聞き捨てならない内容も含まれていたのだ。
「…つまりキョーコちゃんが芸能界に入るきっかけになったのも、ラブミー部に所属しなきゃならない程の恋愛拒否症になったのもその幼馴染みのせいなの!?」
社は和泉の言葉に頷き、更なる協力を願い出た。
「いいわ、全面的に協力する。
要するにその幼馴染みってのがキョーコちゃんに接触するのを妨害し、尚且つキョーコちゃんが敦賀君の気持ちに気付く様に仕向けろってことね。
…ところでその問題の幼馴染みとやらは誰なのよ。」
「…アカトキの歌手、不破 尚ですよ。」
説明する事に集中していた社は、和泉の異変に気付くのが遅れてしまった。
そう、それこそが事態をとんでもない方向に運ぶことになろうとは。
「不破 尚…っ!?
あの不敗神話のトップアーティストがっ!?」
そう、和泉の顔に驚愕と共に底知れぬ程の怒りが沸き上がったのに社は気付くのが遅れてしまったのだ。
「…ふ、ふふふ…。」
低く呻く様などこか闇の底から来る様な寒気を覚える不穏な笑い声を聞き、ハッと顔を上げた社の目に飛び込んで来たのは、ホラー映画のキャラクターも裸足で逃げ出すんじゃないかと思えるブラックオーラを纏った和泉の姿だった。
「みっ、みみみ緑川さんっ!?」
「…ファンクラブLME支部に召集掛けてやる…。」
「ファンクラブはLMEのでしょうが!?」
「甘いわ社君!!
京子ファンクラブ会員の中に一体何人のLME社員がいると思ってるの!?
そのメンバーがLME支部員たちよっ!!
見てなさい不破 尚~っ!!
支部員の総力を挙げてけっちょんけっちょんにしてやるからぁぁ~っ!!
あ~っはっはっはぁ~っ」
「ちょ、ちょっと!?
みっ、緑川さんっ!?」
最早完全に暴走する緑川を止める術は社には無かった。
その後どこまでこの話が飛び火したのか、かつて天使の守護者であった者たちまでもが加わり、不破 尚がとんでもない目に遭わされる破目になるのだが…蓮の困難を極める初恋の行方は定かではない…。
END?
ある意味鬼切りです!!
どの辺がって初恋云々が(笑)
この後スッキリと溜飲を下げた緑川 和泉女史、全力投球で京子のマネージャー業に勤しみますが、約一年半の後、新たに引き継ぐ筈の大学卒業したての新人マネージャー、笠井 有里子嬢と京子の取り合いになったのはおまけなお話です。
こんなオチにしちゃいました、魔人seiさま!!
こんなんでよければお納め下さいませ。m(__)m
読んでくださった皆さまに感謝します。
ありがとうございました。