始めちゃいました、魔人seiさんからのドボンネタ!!


seiさんところでは【地下鉄の天使】(仮)というタイトルが付いてたんですが、ファンクラブネタということで敢えてタイトルから弄ってみました!!




それではご期待に沿えるかどうかはさておき、いりるの暴走を温かい目で見てやって下さいませ♪
m(__)m











天使の守護者たち (1)













《ファンクラブ内特別通達----“天使降臨”》



それはタレント兼女優、京子のファンクラブのサイト掲示板に載せられる、いわば隠語である。


京子が芸能界に籍を置くようになって数年、ドラマ、CM、クイズ番組、コメディ満載のバラエティーなど多岐に亘る活躍は、京子の魅力を世間に知らしめるには十分なものであった。



料理番組では年齢に不相応な程のその腕前を見事に披露し、トーク番組に出演すればこれまた年齢に不相応な程の古風な物言いが受け、クイズ番組に至っては努力の花が実を結んだかの如き活躍を披露する。



今や京子はLMEでも上位に入る売れっ子であった。



…そんな京子だが……。




「…大丈夫ですか?
ご気分が優れないご様子ですので声を掛けさせて頂きましたが…。
どちらまで行かれるのですか?
  …お急ぎでなければ一度下車して休憩された方が…。
あ、宜しければこちらを…っ!!」



急に気分を悪くした女性に手を貸し、てきぱきと鞄からビニール袋やらタオルやら引っ張り出し、丁度駅に停車した地下鉄の車両から女性と共に降りて行く姿に乗り合わせた者達はあまりの手際の良さに見惚れるやら、その美しくも優しい微笑みと言動、心遣いに感嘆の溜め息を吐くやら。



…そう。



自分が未だ新人の域を出ないひよっこだと思い込んでいる京子は、事務所までの道のりを毎朝地下鉄で通っているのだ。



そんな京子の地下鉄通勤を知ったファン達が京子に接触したがるのは当然であったが。



彼らは目撃者となったのだ。



地下鉄に心優しき天使が舞い降りるその瞬間の…。



以来、彼らは守護者となった。


京子の通勤時間に都合の着くファンクラブ会員達でローテーションを組み、京子も知らぬ間に京子が不快なファンにもみくちゃにされないよう遠巻きにガードする。


そうしてプライベートの京子の姿に惚れ、更に魅了された者達の口コミによって京子のファンクラブ会員が更に増えるという循環を産み出していたのだ。




「…椹主任、この京子ちゃんの公式ファンクラブのサイトの掲示板に何か意味不明の書き込みがちらほらと…。」



毎日所属タレント達のファンサイトやフリー掲示板の書き込みをチェックしている事務所のスタッフが、タレント部主任、椹 武憲に声を掛けた。



「ん?…何だこりゃ。
“本日3両目前方に天使降臨
守護者の加護を求む”  ……?
何処かの宗教でも間違えて書き込んだんじゃないか?」



「…いえ、違うと思います。
この書き込み、毎朝大体決まった時間みたいですよ?
しかもこの後…ほら。」



「…何々…?
  “今日も我らが天使の笑顔と平穏は守られた。
守護者各位の尽力に感謝する”?
…ますます解らんな…。」



「…主任、これ…まだ推測の域を出ないんですが。
京子ちゃんのファンクラブ内で何かが起こってるんだと思います。
これは確かめてみないと…京子ちゃんに何かあってからでは大変ですし。」



スタッフの提案に椹も同意し、先ずは掲示板の内容の真意を確かめんとファンクラブの会員名簿から書き込みをした人物を割り出し、事情の説明を求めることにした。



事務所に入所するに当たっての経緯は奇抜だが、それ以降は際立った問題を起こす事もなく、寧ろあんないい娘(こ)何処で見つけてきたのかと周囲に訊かれる程の評判を上げて、業界内でも大御所と呼ばれる方々に一目置かれるまでになった京子を、椹は我が子を見るような気持ちで案じていたのだった。




------それから数日後。


名簿と会員ナンバー等からどうにか書き込みをした人物を割り出した事務所側は、その人物との接触を試みた。



「…お時間を取らせて申し訳ありません。
私はLMEタレント部主任をしております、椹と申します。
こちらは部下の田島です。」



待ち合わせた喫茶店で椹っ同行していた部下が待っていると、店員に案内された男女がやって来た。



「…初めまして、田村と申します。」



「笠井 有里子です。」



出された名刺を受け取りながら、男女は戸惑った様子ながらも各々に名前を名乗った。



注文した飲み物が出てくるまで、椹は2人に接触した理由を説明して確認したい事があるのだと告げた。



「…ご存知の通り私も彼も京子さんのファンクラブの会員です。
そのファンの立場から嬉しくもあり心配でもある状態がずっと続いている事を、事務所の皆さんはご存知ですか?」



笠井と名乗った若い女性が、ファンクラブのサイトにメッセージを載せている理由を語り始めた。