「…はい。」


「何故だ?
先日、皆と仲良くやっていると聞いたばかりだろう。」

「…はい。
実は…父の仕事に着いて江戸を離れる事になったのです。
  江戸を離れる事になれば、あの馬鹿旦那だってさすがに追いかけては来ませんから、かえって好都合ですし…。
下屋敷の皆さま方には良くして頂いて、本当にお世話になりましたが…」


「此処にいてはくれないか?
私の傍に…。」


その言葉に、おりょうは嬉しさと哀しさの入り交じった笑みを浮かべた。


「できません…。
永遠さまのお傍にいて…私に永遠さまが婿入りされるお姿を見ていろと仰るのですか…?
そんな残酷な事を…仰らないで下さい。」


離してくれない永遠の手を振りほどくようにして逃げようとするおりょうに、永遠は平然と言い放った。


「…母上なら分かって下さる筈だ。
私が誰を望んでいるか、疾うの昔に知っておいでなのだから。
…たとえ許して下さらなくても、私が望むのはお前だ、おりょう。
…何処にも行かないでくれ。
お前が居てくれれば、私は…!」


「お止め下さい、永遠さま…!
それ以上は仰らないで下さい…。
永遠さまならきっと善き藩主として、領民を守って下さるでしょう。
永遠さまの輝かしい行く末を、私などと秤にかけてはいけません…。」


離してくれない永遠の目から顔を隠す様に俯いて、おりょうは力なく蹲った。


「…おりょう…。」


顔を背け、肩を震わせるおりょうに苦しそうな声音で話し掛けようとした永遠の背中に、永遠付きの側近が声を掛けた。


「…こちらにおいででしたか、永遠さま。
殿より火急のお召しにございます。
急ぎお支度をお願い致します。」


「…分かった。」


永遠はそこで漸く掴んでいたおりょうの腕を離し、後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った。


残ったのは蹲ったままのおりょうと、恐らくは一部始終を見届けていただろう側近の男。


「…おりょう…さん、辛かったな。
よく…我慢したな。
  偉かったよ。
落ち着いたら奥方様の所へ行ってくれ。
急ぎじゃないが頼みたい事があると探しておいでだったからな。」


おりょうを労って、永遠付きの側近は去って行った。
おりょうは俯き蹲ったまま、動く事が出来なかった。


「……カーット!!
  OKです!!」


スタッフの声が聞こえると、キョーコはその場でぺったんこの紙のように平べったくなっていた。






う~ん…劇中劇っていうよりパラレルみたい。←ツッコミどころ満載でどこからツッコんでいいのやら…|orz