此処は某プリンセスホテルの大ホールを借り切って設えられた記者会見場。

集まった報道陣は200人を軽く越えた。

それもその筈、今までいい男の代表格でありながら浮いた噂の一つ出なかった超人気俳優、敦賀 蓮の初スキャンダルの記者会見なのだ。

飛び付かないマスコミなどいる筈もない。

本人が出てくるのを今か今かと待ち構え、目をぎらぎらさせる様は獲物を狙うハンターさながらであった。


[お待たせ致しました。
  それでは記者会見を始めさせて頂きます。
  弊社所属、敦賀 蓮及び京子、入場いたします。]


LMEの広報担当者の司会で記者会見が始まろうとしていた。




[え~、皆様におかれましては聞きたい事が山程あるかとは思いますが、より沢山の質問をお受けするためにも一問一答とさせて頂きます。]


司会者の言い様に軽い笑いが起こったが、直後に渦中の二人が入場して来た事で一気に雰囲気がヒートアップした。


あまりにも殺気立った様子に怯えた京子が、蓮に縋る様に寄り添ったからである。

当然の様に京子を庇う蓮の姿に、フラッシュの嵐が巻き起こる。


[カメラ撮影は会見の後にお願いします!!
着席しませんと会見が始められませんよ!!]


司会者の制止にカメラのフラッシュが少しだけ控えられたが、大した抑止力にはならなかった。


全国のファンを始め、蓮と京子それぞれに想いを寄せる者達が固唾を飲んで見守る中、漸く記者会見が始まろうとしていた。




「…え~、本日はお忙しい中、これ程沢山の報道陣の皆様にご足労頂きまして大変恐縮しております。」


着席するなり蓮はマイクを取り、報道陣に向かって一礼した。

当然京子も立ち上がり、一礼する。


「…早速ですが皆さんが聞きたがっている事を、出来うる限りお答えしようと思いますので、質問をお願いします。」


再び着座し、司会者に頷き返した蓮は、テーブルの下でキョーコの手を優しく握った。



「敦賀さん、昨日から動画サイトに投稿されている画像はご覧になられましたか?」


「はい、見ました。
一般の方が撮影したもののようですね。
一切偽りはありません。」


「京子さんが仰言っていた事もですか?」


「はい、間違いありません。
昨日の不破さんとのやり取りに一切の偽りもありません。
昨日が敦賀さんとの初デートだったんです。」


「では交際を認めるんですか?いつからです!?」


「動画サイトをご覧になられたならお分かりでしょうが、昨日からです。
  今まで何度も付き合って欲しいと申し込んでアタックしていましたが、彼女が受け入れてくれなくて…。
やっと、やっとですよ!!
彼女が受け入れてくれたんです!!」


嬉しさのあまり頬を染めて破顔の笑みを浮かべる蓮に、キョーコも恥ずかしさのあまり目を潤ませて蓮を見詰めている。

ただでさえ昨日の姿を再現させようとメイクアップして誰もが魅入る出で立ちなのに、そんな仕草をされたら…。

蓮がちらりと報道陣に目を向けると、年齢問わず男女問わず、赤面している団体様。


男性報道陣はキョーコに見惚れ、女性報道陣は蓮に見惚れた結果であった。