「…そ。アンタの予想通りのあのコ、よ。ア・ノ・コ。
ちょっとした縁でスゴ~く仲良くなってね、アンタの事色々話してくれたわ。
だからデタラメなんか一つたりとも言って無いわよ?
なんだったらあのコから聞いた山程あるアンタのろくでなしエピソードの数々、並べ立ててあげましょうか?
皆が見て、聞いてる前で。
…どうする?」
そこまで言われて、尚は漸く衆目がある事に気が付いたらしく急に大人しくなった。
「…チッ。
アイツがそんな事軽々しく話すなんて思いもしなかったぜ!
その程度のオンナだなんてな。」
悔し紛れな科白を吐く尚に、“セツカ”が嘲笑って見せた。
「勘違いも甚だしいわね。
あのコはアタシの他には本当に信頼してる人にしかアンタの事なんか話してもいないわよ。
アンタの事を切り捨てたい過去の遺物だって、何の気持ちの乱れも無く言い放ってたんだからね、あのコ。
もし次にあのコを見掛ける事があっても、間違っても馴れ馴れしく声なんか掛けんじゃないからね!?
そういう話がアタシの耳に届いたら、今回どころじゃない騒ぎにしてやるから!」
あのコが味わった苦汁をアンタに何倍にもして味あわせてやるから覚悟しなさい、と睨み付けられて愕然としたが、それよりも派手な女が巻き付いている背の高い男の醸し出す雰囲気に、尚は恐怖を覚えた。
さっきから一言も喋っていないにも関わらず、自分を見る目に宿る悪意…殺意と言っても良い。
視線に人を殺す力が有ったら間違いなく自分は死んでいると思える程だった。
その男が不意に視線をずらし、派手な女に目を向けると、巻き付かれているのとは反対側の手で頭を撫でると、耳元でぼそぼそ話しもう一度尚をを睨み付けた。
《~~~~~~~》
尚には何と言ったのか聞き取れなかった。
だから解らない、という顔しかしようがなかったのだが、それが相手どころか周囲にさえも嘲笑われるネタになろうとは。
黒を纏ったその男は馬鹿にした様子で鼻で笑うと、わざわざ日本語で嘲った。
「…トップアーティストが聞いて呆れるな。
あんな簡単な英語も聞き取れないのか?
ああ、アジアの片隅の国のトップなら英語が解らなくてもやってられるってことか。
…こういうの、確か日本の諺で“井の中の蛙大海を知らず”っていうんだったかな。」
そう言って黒い気配を纏う男は腕に絡み付いている派手な女に目を向けた。
「そうよ、的を射た諺ってこういうのよね。
流石はアタシの兄さんだわ。
小さな猿山のサルとは訳が違うもの♪
…さ、行きましょう。
」
黒づくめの男と頷き合い歩き出した女に散々馬鹿にされた男が、我に返った時には既に2人の姿は何処にも無かった。
さて、翌日のワイドショーで取り上げられる事はなかったものの、彼らのやり取りは噂として業界内で拡がりを見せて、しばらくの間不破 尚が音楽番組に顔を出さなかったのは後日談の一つであった。
数年後、彼の黒い気配の男が敦賀 蓮で、くっついていた少女が京子であったと知った時の不破の怒り様は、後から起こった一騒動で後々までの語り草になったのもまた後日談の一つとしておこう。
「あのカインが敦賀さんだったってバレるまでの数年間、アイツがびくびくしてたのは痛快でしたね♪」
「あの時セツカが君の代わりに思う存分言ったからこそ、気持ちの整理が着けやすくなったんだから彼には感謝しないとね。」
滅多に重ならない貴重なオフに、寄り添って食後のコーヒーを飲みながら昔話に花を咲かせ、微笑みを交わしあう蓮とキョーコであった。
-end-
あの~、…結局何がしたかったのやら、私は。←コラ
ちょっとした縁でスゴ~く仲良くなってね、アンタの事色々話してくれたわ。
だからデタラメなんか一つたりとも言って無いわよ?
なんだったらあのコから聞いた山程あるアンタのろくでなしエピソードの数々、並べ立ててあげましょうか?
皆が見て、聞いてる前で。
…どうする?」
そこまで言われて、尚は漸く衆目がある事に気が付いたらしく急に大人しくなった。
「…チッ。
アイツがそんな事軽々しく話すなんて思いもしなかったぜ!
その程度のオンナだなんてな。」
悔し紛れな科白を吐く尚に、“セツカ”が嘲笑って見せた。
「勘違いも甚だしいわね。
あのコはアタシの他には本当に信頼してる人にしかアンタの事なんか話してもいないわよ。
アンタの事を切り捨てたい過去の遺物だって、何の気持ちの乱れも無く言い放ってたんだからね、あのコ。
もし次にあのコを見掛ける事があっても、間違っても馴れ馴れしく声なんか掛けんじゃないからね!?
そういう話がアタシの耳に届いたら、今回どころじゃない騒ぎにしてやるから!」
あのコが味わった苦汁をアンタに何倍にもして味あわせてやるから覚悟しなさい、と睨み付けられて愕然としたが、それよりも派手な女が巻き付いている背の高い男の醸し出す雰囲気に、尚は恐怖を覚えた。
さっきから一言も喋っていないにも関わらず、自分を見る目に宿る悪意…殺意と言っても良い。
視線に人を殺す力が有ったら間違いなく自分は死んでいると思える程だった。
その男が不意に視線をずらし、派手な女に目を向けると、巻き付かれているのとは反対側の手で頭を撫でると、耳元でぼそぼそ話しもう一度尚をを睨み付けた。
《~~~~~~~》
尚には何と言ったのか聞き取れなかった。
だから解らない、という顔しかしようがなかったのだが、それが相手どころか周囲にさえも嘲笑われるネタになろうとは。
黒を纏ったその男は馬鹿にした様子で鼻で笑うと、わざわざ日本語で嘲った。
「…トップアーティストが聞いて呆れるな。
あんな簡単な英語も聞き取れないのか?
ああ、アジアの片隅の国のトップなら英語が解らなくてもやってられるってことか。
…こういうの、確か日本の諺で“井の中の蛙大海を知らず”っていうんだったかな。」
そう言って黒い気配を纏う男は腕に絡み付いている派手な女に目を向けた。
「そうよ、的を射た諺ってこういうのよね。
流石はアタシの兄さんだわ。
小さな猿山のサルとは訳が違うもの♪
…さ、行きましょう。
」
黒づくめの男と頷き合い歩き出した女に散々馬鹿にされた男が、我に返った時には既に2人の姿は何処にも無かった。
さて、翌日のワイドショーで取り上げられる事はなかったものの、彼らのやり取りは噂として業界内で拡がりを見せて、しばらくの間不破 尚が音楽番組に顔を出さなかったのは後日談の一つであった。
数年後、彼の黒い気配の男が敦賀 蓮で、くっついていた少女が京子であったと知った時の不破の怒り様は、後から起こった一騒動で後々までの語り草になったのもまた後日談の一つとしておこう。
「あのカインが敦賀さんだったってバレるまでの数年間、アイツがびくびくしてたのは痛快でしたね♪」
「あの時セツカが君の代わりに思う存分言ったからこそ、気持ちの整理が着けやすくなったんだから彼には感謝しないとね。」
滅多に重ならない貴重なオフに、寄り添って食後のコーヒーを飲みながら昔話に花を咲かせ、微笑みを交わしあう蓮とキョーコであった。
-end-
あの~、…結局何がしたかったのやら、私は。←コラ