何も考えずに身体が動いた。

彼の滑らかな額から唇を離して笑いかけると、彼は握っていた私の両手を引っ張って片膝を折っていた足の上に引き寄せ、その腕の中にすっぽりと包み込んでくれた。

頬が彼の胸に当たった瞬間、鼻に安心する薫りが入って来て、嬉しくて身体を預けてしまった。


…それがまずかったのかもしれない。


不意に顎に彼の大きな掌の感触があったと思ったら、掬い上げられて熱くて柔らかな感触のものが私の唇に重なり、力強い影に視界が覆われた。


「…んふぅっ…!!」


それが彼から贈られた初めてのキスだと気付くのに時間は掛からなかった。


体が熱くなる。

きつく抱き寄せられ、背中を撫で上げる掌の熱さと私の唇を割って侵入してきた艶かしい動きをする舌に翻弄されて頭がくらくらしてきた。


思わず彼のシャツを握りしめていたけれど、そんな手からも力が抜けてきてしまった。


息が出来なくてぐったりしてしまった私に気付いた久遠さんは、急に慌て出した。


「ごっ、ごめん!!
つい夢中になってしまって…。
大丈夫?」


膝の上に乗ったまま荒くなった呼吸と鼓動を整えようとして深呼吸していたら、ぼぅっとしていた頭もすっきりしてきたけど、同時に今していた事と彼の膝の上にいるという事態に顔が熱くなった。


「…嫌だった?」


どこか頼り無げな、捨てられた子犬のような不安げな眼差しに、また私は彼を可愛いと思ってしまった。


「…嫌なんかじゃないですよ?
ちょっとびっくりしたけど…。
私の本当のファーストキス…ですよね。
気持ちが伴っているキスって…何て言えばいいのか…そう、胸がいっぱいになるんですね。」


私が素直な気持ちでそう言うと、久遠さんは明らかにほっとしたようだった。

そうしてお互いに微笑みを交わしあい、どちらからともなく再び唇を重ねあった。



…どれ位夢中になっていたのか、気が付いたら私は彼のベッドの上で半分服が肌蹴た状態だった。

しかも電気が煌々と点いたままの部屋で。


「ふっ、ふみゃあっ!?
くっ、久遠さんっ!!
あぅ…っん!!
待っ、待ってぇ…っ!!」


正気に戻ってしまった気恥ずかしさから、慌てて私の肢体に覆い被さっていた久遠さんの頭を押し退けようとした。

その時、彼の唇は私のささやかな胸を掠めていたのだ。


「…ん?
どうしたの、キョーコ?」


「あっ、あのっ!!
お願いがあるんです!!」


「…何?
もしかして結婚するまで清い関係でいたい…とか?」


「そっ、そういうことじゃなくて…。
あの…シャワー浴びに行ってきたいんです。
今日1日、沢山遊んだし、汗かいてるし、埃だって…。」


「…俺は気にならないけど?
むしろ君の甘い香りが堪らないんだけどね…。」

さらっとそんな事を言いながら、彼の大きな掌は私の肌の上を滑り、痺れるような感覚を呼び起こす。


「…っ、やぁん!!
おっ、お願いぃ…!!」


涙腺が緩みかけていたけど、涙を堪えながらお願いすると、彼の動きがぴたりと停まった。


「…っ、その顔は反則だよ…。」


そうして私は希望通り、シャワーを浴びる事が出来たのだった。









…この位ならまだ限定までいかないですよね?

次回は限定になっちゃいます。


しかし更新が亀より遅いでんでん虫状態に…。

すんません。(__;)