「…ほんとですね。
落ち着いたらちゃんとご挨拶したいです。
いっぱい聞いてみたい事もありますから。」


「…何を?」


「敦賀さんのデビュー当時の貴重なお話を聞けるかなって…。
私、出逢ってからしかの敦賀さんしか知りませんから…。
あ、違った。
再会してから…ですね。
もっと沢山、敦賀さん…久遠さんの事が知りたいです。」


何故か気持ちが通じあってから、私は誤魔化すとか全然出来なくなった。

久遠さんに聞きたいことは正直に聞いてしまう。

言いたいことも正直に言ってしまっていた。

そんな私に、久遠さんは嫌な顔ひとつしないで応えてくれた。


「…彼に聞かなくても、俺がありのままの自分を教えてあげるよ。
…後でじっくりと…ね。」


?????
…何故か身の危険を感じて鳥肌が立ったわっ!?

何だろう、例えて言うなら巣穴の奥までオオカミに追い詰められたウサギの気分だわ!?


「…ま、ともかく状況把握するのが先だよね。」


そう言ってすっと立ち上がる久遠さんに、追い詰められたウサギの気分は起きなかった。


「…凄い事になってるみたいだよ。」


ノートパソコンを開いたまま運んできた久遠さんは、呆れた様にため息をついた。

見せられたのは掲示板らしきサイト。


「凄い…書きまくられちゃってますね。」


中には夕方のありのままを事細かに掲載しているものや、目撃した事態に対する心象、私達がデートする事がショックだ等、様々な呟きが掲載されていた。

私にその画面を見せると、久遠さんはパソコンを操作して今度は動画サイトも見せてくれた。

こちらも同様に凄かった。
ついていたコメントも同様だった。


「…社長さんの耳にも直ぐに届いちゃいますね、これじゃ…。」

出し抜くのなんて無理かもしれないと思ったけど、やりもしないで社長さんの掌の上でコロコロ転がされるなんてまっぴら御免だと思い直した。

久遠さんも同じ気持ちだったのか、すぐに社さんの所に電話を掛けた。


「もしもし、俺です。
今日はありがとうございました。
社さんが頑張ってスケジュール空けてくれたから、人生最高の時間を過ごしてますよ。
…ええ、気持ちが通じました。
やっと両想いになれましたよ。
…でもですね、社さん。
初デートにして初報道陣の餌食になりそうなんです。
いえ、そうじゃなくて…。」


久遠さんも説明するより観て貰った方が早いと判断したらしくて、社さんに動画サイトを観てくれと頼んでいた。


「…え!?
いや、ちょっと待って下さい、社さん!!
…切っちゃった。」


一通り動画を観たらしい社さんが電話越しになにか叫んで、一方的に電話を切ってしまったというのは判った。

…社さんらしくない態度に私がびっくりしていると、久遠さんも苦笑いしながら電話を切った。


「…今すぐ来るって。
電話越しじゃ埒が空かないってさ。」


良い機会だから全部社さんにも話す、と吹っ切れたように久遠さんは笑った。


「俺の素性も、経歴も全部社さんに話すよ。
君が傍に居てくれれば、俺は大丈夫だから。」











…二人きりのマンションなのに…らぶらぶする前に社長撃退計画を立てなきゃならなくて…らぶらぶお預けです~(>_<)