「…そんな人からのファックスじゃ、早く確認した方がいいんじゃありませんか?
社長さんに先手を打つなら尚更…。」


「…そんなに気になる?
ファックスの内容…。」


「それは勿論…。」


ためらいもあったけど、正直に気持ちを伝えようと思った。


「…あれだけの騒ぎになったんですから、あの馬鹿と私の関係をマスコミが追いかけるのは当然です。
それよりも私と久遠さんがデートしていた事がどう報道されるか…。
おそらく社長さんも嗅ぎ付けてますから、何よりどう転がされるか、そっちの方が怖いです。
だって場合によってはお付き合い自体を潰されかねない状況ですから…。
そうならないための予防策がファックスにはある筈です。
気にならない方がおかしいでしょう?
…って、あれ?
なんか言ってる事がごちゃごちゃ?」


なんだか自分で言ってる事が分からなくなってきちゃった!?

でも久遠さんは解ってくれたみたい。

にこにこしながら席を立ち、私に手を差し出した。

その時にはもうデザートも食べ終わっていたから、レストランを出ても何の問題も無かった。


「…じゃあドライブはまた今度にして、ファックスの中身を確かめに行こうか。
決着さえつけば、心置きなくデートも出来るし…ね?」


ちゃんと話が解って貰えたのが嬉しくて、私は差し出された手を躊躇うことなく取ったのだった。



マンションに着くまでのほんの少しの間でも、いつものように車の助手席に座っているだけなのに私にとっては楽しいドライブで、胸がドキドキして顔が赤くなっている気がしていた。

…でも久遠さんは何故か無口で無表情…。

私、浮かれてて何かまずいことしたのかな?

でもこの雰囲気…以前にあった気がするんだけど…。

「あ、あの…久遠さん?」


「…何?」


「私…何か気にさわる事しましたか!?」


気になっていた事を正直に口にした途端、車は高いブレーキ音と身体に掛かる強い負荷と共に急停車した。


「なっ、何で!?」


「…車に乗ってからずっと黙ってるし、無表情になってるし…。
怒ってるって感じはしないんですけど、何か我慢してませんか?」


思ったままを口にすると、久遠さんは私から視線を外して、大きなため息をつきながらハンドルに突っ伏した。












動く密室に両想いの可愛い彼女と二人きり…久遠さんの理性は枯れたゴム紐寸前!?