「…そうだね。
俺も君と彼の記事なんか見たくもないし…。
俺と君なら大歓迎だけど。」


「私もアイツとスキャンダルなんて死んでも御免です!!
…かと言って久遠さんを記事に載せる訳には…。」


「俺は君以外の娘とスキャンダルになるつもりは全くないから構わないけど、今のこの格好じゃ周りの人達には分からないよね…。」

まだまだひよっこのぺーぺータレントの芸能人生命を断ち切るおつもりですか、貴方は~!

そんな事を考えて青ざめる私と、全く動じる事無くゆったり構えている久遠さんの様子に、しびれを切らしたアイツが噛み付いてきた。


「~おいっ!!
人のコト無視すんじゃねぇ!!
生意気なんだよ!!」


つかつかと近寄って来たアイツだったけど、久遠さんが私を背中に庇ってくれたから、以前のような不意打ちを受けずに済んだ。


「…俺の大切な彼女に近寄らないで貰いたいね、不破君。
昔がどうであれ、今の彼女にとって君はどうでもいい存在なんだよ。
あの撮影の時の様に彼女に何かしたら、今度こそただじゃおかない…!」


久遠さんのその言葉に、ショータローは目を見開いた。


「…ま、さか…お前、敦賀 蓮!?」


私を庇っていた背中から自分の腕の中に引き寄せると、久遠さんは射殺さんばかりの目でショータローを睨み付け、優越感を含ませた笑みを唇に浮かべた。

周りのギャラリーからはどよめきが起こる。

同時にカメラのフラッシュも。

…どうしよう、このままじゃ騒ぎが大きくなるだけだ…!

そう思った直後、ショータローを制止する声が響いた。

アイツのマネージャー、安芸 祥子さんだった。


「尚!!
貴方何をしているの!!
休憩時間に入った途端に一般の方に難癖つけるなんて…!!
貴方此処が何処だか分かっているの!?
ギャラリーだって沢山いるのよ?
自分の立場を考えて行動しなさい、全く…。」


ショータローを叱りつけ、祥子さんは私達に頭を下げた。


「本当に申し訳ありません。
失礼な事をしまして…。」


「祥子さんが悪いんじゃありませんよ?
場所と立場を考えもせずに行動したあの馬鹿が悪いんです!」


言い放った私に、祥子さんは目を丸くした。


「あ、貴女一体…!?」


「祥子さん!
そいつら同業者だ、一般人じゃねー!!」


「一応、俺達は気を遣ったんですけどね…。
こちらはプライベートですし、そちらは仕事中でしたから…。
もう少し気を遣うように教育しておいて下さいね。」


何気に『ちゃんと躾て首輪に鎖で繋いどけ』って聞こえますよ、久遠さん…。