しばらくぶりの“誰が一番?”です。




本当にキョーコは、この世界に入って良かったと思っていた。

厳しい世界ではあっても素晴らしい先輩や師匠に恵まれ、友にも出会えた。



「実は…新しいお仕事を、頂いたんです。
 まだ台本は頂いてないんですが、イメージはロミオとジュリエットなんだそうです。
ただ私、粗筋は知ってますが実際にロミオとジュリエットをよく知らない事に気付きまして…不勉強な自分の未熟さに反省していたところです。」


「あはは、そんなのよくある事さ。
まだ始まってもいないんだ、十分に下調べも役作りもできる。
これがクランクインしてからならプロ失格だろうが、…なにより自分の未熟さを認識出来る事は大切だよ。
これから成長していく上での伸びしろになるからね。
新しい仕事も、頑張りなさい。」


そう言って平林はキョーコの肩に手を置いて励ました。


「…はい!
ありがとうございます、平林さん。」


素直に頷くキョーコに、今後の成長が楽しみな平林であった。





“-華恋-”の撮影も大詰めが近かった。



「おりょう、明日は上屋敷までの供をしておくれ。」


奉公に上がったおりょうは奥方に気に入られ、行儀作法等も教えられ、奥方の供をして出掛ける程可愛がられていた。


「畏まりました、奥方様。
御召し物は如何なさいますか?」


「それは大丈夫ですよ。
…ああ、永遠どのにも明日、上屋敷まで同行して貰わねば。
おりょう、永遠どのに言伝を頼みます。」


「はい奥方様。
…この刻限ならば…屋敷の警護の方々とご一緒に鍛練なさっておいでかと存じます。
早速お伝えして参ります。」


深々と頭を下げ、退出していくおりょうを見送り、奥方は最も近しい侍女頭に話し掛けた。


「…おりょうは本当に良い娘だこと。
あれほどの気立ての良い娘は探して見つかるものではないわねぇ…。
永遠どのにはああいう娘が似合いなのに。」


「…まことに。
身分さえ違わねば、一対の絵のような二人でございます。」


永遠の気持ちも、おりょうが永遠に惹かれている事も知っている奥方と侍女頭は、二人の未来が決して明るくない事を不憫に思うのだった。





「永遠様!」


開けた場所で警護の役を勤めている者達と共に鍛練に励んでいた永遠は、一番外れで鍛練していた者に話し掛けられた。

何か用があるのだろうと、鍛練を中断して彼の者に歩み寄ると丁度永遠からは死角になっていて分からなかった場所に、永遠が密かに想いを寄せる娘が立っていた。










久々なんで一回読み返しちゃいました。