胸の奥がじりじりと痛み出す。

…あの二人の間に入る隙がまるで見つからない。

軽井沢のホテルで感じたのと同じ焦燥感だ。

同時に沸き上がるあの日と同じ気持ち。

“運命だとしてもこの俺がぶち壊す、神にだって背いてやる…!”

その気持ちが胸を過ぎった直後、彼女の苛立った様子の声が聞こえてきた。



「…っ!
いい加減に離しなさいよっ!
痕が残ったら迷惑なのよ、それくらいは判るでしょうが!」


苛立ちを隠さずに言い放つ彼女に、不破は更に怒りの色を濃くした。


「…っ…人の気も知らねぇで勝手な口利いてんじゃねぇっ…!」


力任せに引き寄せて、あの日と同じ様に唇を奪おうとした不破は、彼女の思わぬ反撃に呻いていた。

彼女は引き寄せられた勢いを利用して、そのままの速さで肘を不破の鳩尾にめり込ませ、よろめいたところへヒールがやや高めの硬い靴の踵で足の甲を怪我しないと思われる程度に踏み付けたのだった。

…助けに行く隙も無かった…。

痛そうだが、同情はしない。



「う…っ痛ぇ…!」


女の子の力で手加減されているとはいえ、急所に連続攻撃はきついらしい。

うずくまる不破に、彼女は何の感情も見えない目で言い放つ。



「…そうだ、一つ大事な事言い忘れてたわ。
私、あんたへの復讐なんてくだらない事、もう止めたから。」


彼女のその言葉に、不破も驚きを隠せない。


「何だと…!?
逃げんのかよ!」


ムキになって怒鳴る不破に、フン、と鼻で笑って冷たい視線を向けている。


「…逃げる?
馬鹿言わないで欲しいわね。
元々あんたは歌手で私はタレント。
ジャンルが違うんだから復讐なんてやりようがないのよ。
冷静に考えれば分かる事だったわ。
…それに、あんたが私を捨ててくれたお陰で、私は自分の人生を生きられるのよ。
ああ、そこだけは感謝するわ。
でもそれだけ。
あんたに関わって、私は自分の人生を無駄にしたくはないの。
だ・か・ら、今度は私があんたを棄てる番よ。
私はもっと上を…あの人が見ている世界を見たい。
あの人の近くへ、…敦賀さんにもっと追い付きたいの。」



最上さんが言った言葉を理解するのに少し時間を必要とした。

君は俺と同じ未来を夢見てくれるのか…!?

さっきまで苦しかった胸が、一気に温かいもので一杯になった気がした。

彼女は遠くにいる何かを見上げるような仕種をした後、冷ややかな視線を不破に戻した。


「だからあんたはもう要らない。
…これからは同じ業界人としての挨拶くらいはするけど、それ以外では二度と声掛けたりしないで。
じゃあね、バイバイ、ショータロー。」



そう言って踵を返し、ひらひらと手を振って彼女は去って行った。

後に残されたのは自分がかつてしたのと同じ仕打ちを返され、茫然自失になった彼女の元・幼なじみだけになった。


俺はコツコツと足音を立てて去って行く最上さんを待ち伏せしようと、先回りに急いでいた。












もう皆さんお気づきですよね~。

そう、私はスキビキャラの中でもショータローが1番き・ら・いです。

なのでうちのショータローは毎回けちょんけちょんのぎったぎたです。

ショータローファンの方にはごめんなさいですけど、勘弁して下さい~。←スライディング土下座