ローリィは煙草を燻らせながら、全員の顔を見渡した。


「…新開君からも社からも報告が上がって来てるが…相当な餓鬼だな、不破 尚ってヤツは。
…ま、蓮も恋愛に関してはどっこいどっこい五十歩百歩だがな。」


社の顔に苦笑が浮かぶ。


「 …そこでだ。
出来るだけ詰め込む事でもっとダイレクトに攻めたほうがより効果的かと思うんだが、それについてどう思うか、君等の見解はどうかな。」


少し間を置いて、新開が手を挙げた。


「…賛成ですね。
じっくり攻めたほうが良いかと思ってましたが、撮影現場でも隙あらば彼女に俺様な態度で近付こうとしてましたから。
ああいうタイプの人間は、恐らく強烈な刺激を継続して受けないと自覚しないかも知れませんよ。」


次いで社も挙手する。


「同感です。
彼はちっとも解っちゃいません。
この際ばっちり見せ付けて、もう彼女が自分の手が届かない存在だと思い知らせてやるべきだと思います。」


「俺はまだそこまで関わっちゃいないからな。
直で関わってる2人がそう言うなら、異論は無いよ。」


黒崎の言葉に緒方も同意する。


「僕も異論はありません。
春樹はどう思う?
プロデューサーとして不破君を見てる立場としての意見は。」


話を振られた格好で視線が春樹に集まる。


「…新開さんからも話がきてましたから、撮影現場でキョーコちゃんにいちいちちょっかい出そうとしてたって話は知ってました。
まぁ、その度に他のスタッフやキャストに邪魔されて碌に話も出来ないとか。
お陰でビジュアルに問題が出そうな程苛ついてましたよ。
レコーディングも荒れてるから時間ばかり掛かって…。
いかに自分が子供かって周りに見せてる訳で、本当に少しは大人になって貰いたいですよ。」


ため息混じりに報告する。
確かにここ最近の尚の荒れようは、アルバムを作る上でマイナスにしかならなかった。


「…決まりだな。
此処は一発、でかいのぶち当てた方が効き目がありそうだ。
…緒方君。」


煙草を灰皿にぐしゃりと押し付けながら指示を出すべく、ローリィは身を乗り出した。


「はい。」


緒方も身を正す。


「今回の君の映画、主題歌は未だ確定していないと言ってたな?」


「はい。」


「その主題歌、不破にやらせろ。
そして麻生君、今回のアルバムの中にその曲組み込め。
最後に黒崎君、君には悪いが、やや畑違いな事を頼みたい。
本来なら君は30秒以内の芸術を創る人間だが、今回の不破の作る曲のプロモの監督をやってくれ。」



ローリィの発言に、名指しで言われた3人が慌てふためいた。


「尚に今度の映画に合わせた曲を今から作らせて、アルバムに入れるんですか!?」


「僕の映画の主題歌を不破君に、ですか!?」


「俺はCM創るのが仕事で、プロモなんかやった事ないぞ!?」


3人の慌て様も意に介さず、平然とした顔でローリィはさらりと言ってのけた。



「ガツンと行くにゃ、この位の爆弾がいるからな。」









じっくり攻めたところで、お坊ちゃまはきっとわかんないだろうなぁ、と。つー訳でどかんと一発。