それはある日の昼下がり。
翌日の早朝ロケがあるということで珍しくも貴重な午後のオフを手に入れた、抱かれたい男No.1俳優が事務所の廊下を歩いていた時の事だった。


あと少しでラブミー部室という場所で、想い人の姿を見つけたのだが、自分が声を掛ける寸前に別の人物が先に声を掛けてしまい、声を掛けそびれて様子を伺う格好になってしまったのだった。


「京子ちゃん!
おはよう!」


「あ、光さん。
おはようございます。
…あれ?慎一さんと雄生さんは…?」


キョーコと光という青年の会話に、蓮は胸の苦しさを感じた。

(俺の事は名前で読んだ事なんてないのに…。
それにあんなに砕けた感じで話してる…。)


しかしそんな蓮を更に驚愕させる事態が目の前で繰り広げられることになる。


ラブミー部室からキョーコと年の変わらない位のラブミーユニフォームの少女が、キョーコに話し掛けてきた事で、事態が急変するのだった。


「京子さん、こっちの依頼は私が受けていいのかしら…。
あ、おはようございます。」


キョーコと話していた“光”の表情が一気に厳しいものに変わった。


「君っ!!
あの時の階段の…!
もがっ!」


慌てて光の口を押さえたキョーコによって、続きは話される事はなかった。


「ひ、光さんっ!
もうあの時の事は決着着きましたから!
彼女とも和解してますし、ね!天宮さん!」


その様子からキョーコの言わんとした事を察した千織が、光に向かって頭を下げた。

その姿を確認して、やっと光は大人しくなったのだった。


「…本当に?
…まぁ、京子ちゃんがいいなら俺が口出しすることじゃないしね。
じゃああの事、椹さんに報告していいの?
事後報告だけどさ。」


確認してから話す、と言う光に、キョーコは首を左右にぶんぶん振って止めた。



「報告なんてしないで下さいね。
あんなの、誰の得にもなりませんから…。
いっそ忘れて下さい。
忘れてしまうまでは光さんと私たちだけの…ヒ・メ・ゴ・ト…ですよ。」


光の耳元に顔を近付け、どこか悪戯を楽しむかのような仕種で囁き掛けると、光は真っ赤な顔で勢い良く首を縦に振った。


「ああっ!も、もうこんな時間!?
急いで行かなくっちゃ!
きょ、京子ちゃん!またね!」


焦って駆け出した光の後ろ姿を見送りながら、千織はキョーコに尋ねた。


「…京子さん。
私的にはありがたい話だけど、本当にいいの?」


「いいのよ。あれがあったからこうして天宮さんとも仲良くなれたんだし、言わば怪我の功名ってやつでしょ?
結果オーライとも言うもん♪」


「ほんと、貴女には敵わないわね…。
ありがとう。
じゃあ私、もう行くわね。」


「うん、またね~♪」


明るく手を振って千織を見送ったキョーコの後ろから、大魔王の暗い影が迫りつつあったことに、まだキョーコは気付いていなかった………。







光くんとキョーコちゃんの二人だけの秘密、蓮さんが知ったらどーなる!?をテーマに作ってみました。
…ま、おそらく皆さんの想像を超えるのは無理でしょうけど♪