「…はいはい、そこまで。
君達、いくら撮影所内でも、周りの目は気にしなくちゃいけないよ。
…お待たせ、京子ちゃん。
行こうか。
…ああ、不破君。
彼女の時間潰しの話し相手をしてくれてありがとう。
お疲れ様でした。」

流れるような動作でするりとキョーコの手を取り、腰にまで手を回すと、いかにも尚がただの暇潰しに使われたかの様に言い放ち、蓮はキョーコを伴って車へと向かった。

「あっ、おい、待てよっ!!」

まだ追い掛けようとする尚を遮るように社が立ちはだかると、尚は怒りもあらわに噛み付いてきた。

「何なんだよアイツ!
第一アンタもだ!
邪魔すんじゃねぇ!」


尚のその言動に、社は深いため息を一つつくと自分を見下ろす尚を冷ややかな目で見つめた。


「…不破君。
今更ながら言わせて貰うよ。
俺は社 倖一。
敦賀 蓮のマネージャーだ。
そして京子ちゃんとももちろん親しいからね、君と京子ちゃんの関わりについて知らないわけでもない。
だから君の態度は俺も正直不快なんだよ。
…でも一つだけ忠告してあげよう。
人に対する礼儀は、最低限覚えなさい。
君がそんな風に曝した恥は、そのままアカトキの恥になるんだ。
アカトキは自社の所属歌手にどんな教育しているんだ、ってね。
あまり酷いと、会社に損害を与えかねないって事で、最悪解雇もあるしね…。
今回は黙っていておいてあげるけどね…少しは考えないと君…ここ(芸能界)に居られなくなるよ。」

あまりの言われように固まってしまった尚を置き去りにして、社は軽く頭を下げ、蓮とキョーコが待つ駐車場に向かったのだった。




「お待たせ~。
ごめんね、キョーコちゃん。
悪いな、蓮。
ちょっとムカついたから、不破にお灸を据えてきた。」

車の外で待っていた二人に軽く詫びて、さっさと後部座席に乗り込むと、社は早く帰ろうと催促した。

「あの、社さん、お灸って何を…。」

後が心配なキョーコは何をしたのか気にかかり後部座席の社に尋ねた。

「心配いらないよ。
ただの挨拶指導しただけだからさ。
ま、そんな態度だとアカトキをクビになるかもねっておどかしただけだよ♪」

明るく話す社の、まんざら嘘でもない言葉に、蓮が笑い出した。
実際ふてぶてしいとか生意気とか自意識過剰過ぎる輩は、芸能界において長生きは出来ないものだから。

「…くっくっくっ…。
不破君にはいい薬でしょうね。」

「…アイツが社さんの言葉に耳を貸せば、ですけどね。」

なにしろ俺様ですから、と言うキョーコの発言に、車の中は暫く笑い声に溢れていた。








うちの馬鹿ショー、ここのところあちこちでけちょんけちょんです。