パパとママ、…私。（２１）

キョーコ扮するサラと、案内役のマリアは知らず知らずの内に事務所内を盛大に引っ掻き回し、最後にキョーコにとっては一番馴染み深いタレント部にやって来ていた。

そこにたまたま顔を見せたのは、キョーコの初めてのレギュラー番組を仕切る先輩、ブリッジロックの３人だった。


「おじさま～♪
お邪魔しますわね。」

うきうきとスキップするかのような足取りに、椹の顔はほんの少し引き攣っていた。
社長室に行く前のキョーコにいきさつを聞いてはいたものの、そのあとに事務所内で彼女達が巻き起こした大騒動は社内メールで全部の部署が情報を共有していたからだった。


「や、やあマリアちゃん…。
それと…。」

戸惑いながら返事をすると、一日稽古の為に扮装しているキョーコがタレント部に入って来た。
もう事務所中の好奇心剥き出しの視線を浴びっぱなしだった為に、じろじろ見られても全く気にならなくなっていたキョーコは、すっかりサラ魂に取り憑かれた状態で椹の所までやって来たが、椹の前に立った途端、いつものキョーコに戻って見せた。

「お疲れ様です、椹主任。」

「…おお、京子くん。
マリアちゃんと一緒になって何やってるんだ？
事務所中大騒ぎだぞ？」

「え、大騒ぎ…ですか？
私はただ、社長さんから課題を追加されましたので、それに添って行動しているのですが…。」

「何を追加されたんだ。」

「先程ご報告申し上げた通り、今日一日、先生の娘役を演じ続ける事になっていますが、“椹主任から聞いた”か、私が演じていると見破った人物の前でのみ“正体”を晒す事…と。それ以外は一切ばらすな、と。」

その言葉に、椹は大きなため息をついた。
つまり社長の楽しみに付き合わされる羽目になった訳だ。






ブリッジロックの面々、今回は名前だけ出演。平林さんに続き捏造キャラ、小谷くん登場。