そんな会話がスタジオ内で繰り広げられているとは知らず、主演女優と俳優は傍目にいちゃこいてる様にしか見えない行動をとっていた。


「ホントにもう下ろして下さいってばぁ~!
いつかみたいに怪我してる訳じゃないんですから!」

「あぁ、暴れると危ないよ?
…ほら。」

背中と膝裏に廻していた腕をほんの少し下げられ、キョーコは慌てて蓮の首筋にしがみついた。

「きゃっ!
あ、危ないですぅ!
お願いですから普通に下ろして下さぁい!」

しがみついてくるキョーコが可愛くて、ほんの少し歩みが遅くなる。
とはいえスタジオから楽屋までそう距離があるはずもなく、間もなく扉の前に辿り着いてしまった。

「…はい、着いたよ。
俺の腕の中で揺られる心地、如何でしたか?
お嬢さん。」

「~~~!!!
ですからそういうセクハラ発言は止めて下さいって、いつも言ってるじゃないですか!」

真っ赤になって怒るキョーコが可愛くて、つい口説きたくなる蓮だが、当の本人はスルー&空振り、見逃しまくりなのだった。

「ああ、ごめんごめん最上さん。
…ところで何か飲む?
お茶でも入れようか。」

楽屋のドアを開けて中へ促すと、用意してある急須を指差した。

「滅相もない!
敦賀さんに入れさせるなんて後輩として失格ですから、私が入れさせていただきます!
…その、気持ちよく運んでいただきましたし…。」

最後の一言を呟いた時の恥じらう様子に、蓮は毎度お馴染みの“どうしてくれようかこの娘は”状態、無表情で固まったのは言うまでもない。






キリがいいのでこの辺で。