マリアちゃんに背中を押され、社長室を後にした私は、“サラ”としてマリアちゃんの案内で事務所内を散策する事になった。


「ねぇ、マリアちゃん。
まずどこから見せてくれるの?」

「う~ん、そうですわね。
会議室やミーティングルームなんか見たってつまらないですし、衣装部とかから行きましょうか♪」

毎度お世話になっている衣装部だけど、サラは見た事ないもの。

「OK♪
行きましょう。」

衣装部を覗くと、いつもお世話になっている衣装部担当の社員の方に会った。

「おはようございます。
お邪魔してもよろしいかしら?」

マリアちゃんの訪いに気にする様子もなく、構いませんよと返してくれた社員の方に、軽い会釈をして笑いかけると、何故かその方、急に熱でも出たのかしら。
真っ赤な顔をして近くにあったハンガーや衣装ケースを引き倒して、盛大にひっくり返っちゃった。
あまりの大音響に、ワタシもびっくり!
急な体調不良なら救護室に行った方がいいと思って心配して話し掛けると、何故か物凄い慌てて、大丈夫だからって逃げてしまった。


「…ねぇ、マリアちゃん?」

「なんですか?
お姉様。」

慌てて逃げた社員の方が消えた方角を見遣りながら、マリアちゃんに尋ねる。

「あの人、大丈夫かしら。」

マリアちゃんは気にする様子もなくさらりと言ってのけた。

「大丈夫でしょ。
走って行く体力と気力があるんですもの。
それよりお姉様、次はどこに行きましょうか。」

さっきの彼が倒して行った衣装ケースやらハンガーを直しながら、次に回るところを考え始める。

「どこでも構わないわ。
マリアちゃんに案内して貰えれば楽しいもの♪」

手早く片付けて、次の場所を散策しようと衣装部を後にしたのだった。




芸能事務所の中なんか知りませんので、完全に捏造です。ご了承下さい。