「おはようございます。
椹主任。」

“サラ”から“最上キョーコ”に戻って挨拶すると、椹さんはいともあっさり私だって分かってくれた。
かなり驚かれたけれど。

「き、君は最上くんか!?
どうしたんだ?
その恰好は。」

「はい、ラブミー部に社長さん直々の依頼を頂戴しまして、プライベートでクー・ヒズリご夫妻が来日されているのですが、その接待役を仰せつかり…あ、これは椹さんもご存知でしたよね。
お相手ついでに先生が演技指導して下さってまして…、昨日は先生方の息子を、今日は1日娘を演じるように、と課題を戴いているんです。」

それを聞いて椹さんも納得したらしい。

「あ…成る程なぁ。
確かに勉強になるだろうな。
そういうことなら、頑張ってきなさい。」

「はい、それでは失礼します。
…行きましょ、マリアちゃん。」

待っててくれたマリアちゃんと一緒に、私は社長室に向かったのだけど、その私たちの後ろ姿を見送った椹さんが周り中の社員の皆さんから質問責めになった事は、また別の話。



「お祖父様~。
お姉様をお連れしましたわよ。」

コンコン、とノックしながらドアを開けたマリアちゃんと私の目に入って来たのは…相変わらず言うまでもないほど奇抜な恰好の社長さんだった。
…衣裳代、月にいくらかかるのかしら…。

「おう、来たな。
話はクーから聞いてるぞ~。
…うん、あいつらの娘なら多分こんな感じかもな。
上出来上出来♪」

上から下まで眺め回し、納得したらしい社長さんは、座れ、と合図した。

「俺のところを待ち合わせ場所にするなんざ、あいつの意図が見え見えだよなぁ~♪」

実に楽しそうな社長さんに、首を傾げてしまった。
先生の意図って何だろう…?





キョーコちゃんおダシにするクーパパの魂胆見え見え…。