またまた劇中劇編、再スタートです。




おりょうが呉服問屋の若旦那、正太をけんもほろろに何度か振ってしばらく経ったある日の事。


「~~~!!
もうっ!
いい加減にしてよ!
あたしはあんたなんか、顔も見たくないのっ!
ほんっと、しつっこいわよ!
正太!」

またしてもしつこいばか旦那…、もとい若旦那の攻勢にうんざりしていたおりょうは、仕事の邪魔にしかならない男にとうとう勘忍袋の緒が切れた。
人前では決して言わなかった名前で、それも大勢のいる前で声を張り上げたのだ。


「やぁっと俺の名前呼んだな。」

それでも当の本人は相手が嫌がっていることも、自分が好きな相手に鼻も引っ掛けて貰っていない事なぞ気にすることもなく、ただ自分の名前を呼んでくれたのが嬉しいらしかった。
なにしろ幼なじみのくせに、自分の家から仕立て仕事を貰って生計を立てるようになってからというもの、一切自分の事を名前で呼ばなくなったのだ。

「~~~あんたがあたしに仕立て仕事を回してくれている相模屋さんの若旦那だから、今までどんなに絡んで来ても我慢してきたけど、もう我慢の限界よっ!
あたしはあんたみたいなまともに仕事もしないでふらふらしている、すねっかじりの穀潰し(ごくつぶし)の甘ったれ馬鹿男は大っ嫌いなのよ!」

流石、いくら馬鹿でもそこまで言われれば解るのか、正太は顔を赤くして逆切れした。

「何だとぉ…!?
こっちが下手(したて)に出てやってりゃあ調子に乗りやがって…!」

「どこが下手よっ!
そんなに偉そうな下手、聞いた事ないわよ!
やれ顔出せ、付き合え、こっちに来い!
みーんな命令しかしてないくせに!
遊んでばかりで満足に寺子屋通いしてないからそんな馬鹿な事言ってるのよ。
もう一度寺子屋からやり直してらっしゃいな、わ、か、だ、ん、な!」

すっきりしたとばかりに、若旦那に背を向けると、おりょうは速い足取りでその場を立ち去った。
おさまらないのは正太の方である。
往来のど真ん中で、大店の若旦那である自分に赤っ恥をかかせたおりょう。
許せる筈もなかった。
去っていくおりょうの後ろ姿を暗い目で見つめる正太。

そしてこの事がおりょうにとって転機になるのだった。





バカショーに関しては思いっきり自分の本音かも…。
それから、以前ある方から“もちょっと長くていい”とのお言葉を賜りましたが、私が1度に出すのはこんなもんが精一杯みたいです。
すみません。<(__)>