車の中で話し合って、クオンさんの妹の設定が少しずつ組み上がっていく。

私が演じるのは、クオンさんの妹、サラ。
ジュリエナさんがクオン さんを産んだ時に、女の子だったらつけようと思っていた名前だそう。
優しいお兄さんと、愛情溢れる両親に囲まれて育つ。
日本には3ヶ月前に来日。
大好きな父親の生まれ故郷の日本で勉強したいと無理を言って、父の知人宅にホームステイしている。



「明日はこの設定を元にお前は1日“サラ・ヒズリ”になるんだ。
いいな?
ああ、それから今日これからだが、クオンがサラのために、母さんと一緒に洋服を見立ててやってくれ。
サラは双子の妹で、まだクオンと体形に差がないって事にしよう。」

あれよあれよという間に設定も今後の予定も決まって、先ず一度ホテルに戻って食事をしてから動く事になった。
荷物は既に私の仕事中、運転手に頼んでホテルに届けて貰っていたらしい。
…しみじみ用意のいいご夫妻だわ…。

かなりの遠回りにはなったけど、ホテルに到着した途端食事をお願いしたら、ホテルの厨房は戦場になったらしいのは言うまでもない。…かな?
もっとも、来日(帰国?)すると必ず泊まるホテルだけに準備してあるらしいけど。

胃袋を満たしたい先生をうず高く積まれた昼食と一緒に残し、私とジュリエナさんはごく普通の昼食を摂ってすぐに出かけた。

自分とさして変わらないはずの“サラ”の衣装。
兄であるクオンさんが選ぶとしても…しかもこの女性(ヒト)の娘…。

「ねぇ、母さん…?」

「なあに?クオン♪」

…本気で楽しそう…。

「サラのならオレが選ぶよりも母さんが選ぶ方がいいんじゃない?
女同士。」





さぁ、親子ごっこ初の二人、どんな服を選ぶのか。