ニヤリと笑った先生は、ナツの演技に合わせて“パパ”になってくれた。

「折角の機会だからな。
お前の仕事、見せて貰うよ。
…楽しみだ。」

「ママも見ててね♪
終わったら食事に行きましょうね。」

ジュリエナさんも私に合わせてくれた。

「ええ♪何食べるか考えておくわね♪」

ああ、こういうのっていいかも…。

「じゃあ行ってきます。
…監督、お待たせしました。
始めましょう。」

しばらくポカンとしていた安南監督の腕を叩いて正気に戻し、撮影を始めるべく動き出した。
向かう先には既に準備の出来ている留美ちゃんと天宮さんが待っていたので、軽く待たせた事を詫びて撮影に入った。
始めのうちだけ先生たちの目が気になったものの、芝居に集中するうち全く気にならなくなった。



何シーンか屋外のロケを熟し、自分の出番が終わると、監督の許可を貰い、すぐに元のクオンスタイルに戻した。

「…よし、っと。
準備完了。
じゃあオレ行くね。
お疲れサマ、お姉さんたち。
またね♪」

何故かみんな目が点になってたけど、先生たちを待たせているんだもん、後でフォローすればいいよね。

「とうさん、かあさん!
お待たせ!
ごはん食べに行こう?
……なに?
オレの顔にナニかツイてる?」

「いや…何もついてないよ?
お前は本当にかわいい子だなと思っていただけだよ。
なあジュリ。」

じっと私の顔を見ていた先生に、クオンとして聞くと笑ってジュリエナさんに話題を振った。

「本当ね。
こんなにかわいい子、もう誰が来たって渡せないわ。
ぜーったいに渡さないんだから♪
さ、お食事に行きましょう。」

首を傾げる私の背中を押しながら、奥様が後ろで先生と目配せしていた事をその時の私は知るよしも無かった。





同じ子にはちょっと見えないナッちゃんとクオン君なキョーコちゃん。
これは2人に間違いなくイジられます。