席を立って逃げようと思っていたけど、読み合わせ終了間際に机の下で手を握られてしまって、逃げようにも逃げられない!

「…不破君にさっきの事、問い質されるよ?
俺と一緒なら不破君も口出し出来ないから。
手は離すけど、逃げないでね?」

駄目押しを喰らって、逃げ道を奪われた。
でも、ショータローに捕まるよりはずっといいかな。
諦めて大人しく大先輩の言い分に従った。
読み合わせが終わって直ぐに席を立った私達に、ショータローは何か言いたそうだったが、結局話し掛けて来る事もなく上手くその場を離れられた。

読み合わせ前に空き部屋だった小会議室はまだ空き部屋で、ちょうどいいからと社さん共々3人で入り込み、今後の対策を練る事になった。

「不破君が君の相手役の一人になるとは誤算だったね。
それで今後の事だけど…。」

はい、と手を挙げて敦賀さんを見上げた。

「何?」

「さっきの事の誤解を解いておけばいいのではありませんか?
単にあんたが欝陶しいから敦賀さんに付き合ってもらって口裏を合わせただけだと。」

そう言った私を、何故か敦賀さんは少し哀しそうにも見える微笑みを返しながら否定した。

「…最上さん、もし君が彼にそう正直に言ったとして、彼がなんて言うか予想したかい?」

…そう言われてみれば想像してなかったわ。
そうよね、あいつが何て言うか…。

“は?嘘だっただと?
所詮キョーコはキョーコだよな~。
お前みたいな地味で色気のねー女が、言いたかねーが芸能人一×××な男と付き合ってるなんざ有り得ねーよ、はっはっは~、だ♪”

想像するだけで頭にくる~!

「おのれ、ショータルォォォォーっ!!!」

怒り狂って怨キョが噴き出しかけたところで、敦賀さんは私の頭に大きな暖かい手をぽん、と乗せた。




次回、少し戻って視点を変えます。読み合わせ前の蓮さん視点です。