「最上さんの作ったお弁当にありつけるとは予想外にラッキーだったな。
また今度、夕食をお願いしようと思ってたからね。
…じゃあ、遠慮なくいただきます。」

両手を合わせて弁当箱に手を伸ばすと、どうぞという言葉と一緒に湯気の立ったお茶が目の前に置かれ、向かいの席にキョーコが座った。

「…で、さっきの質問。
どうして頬を抓ろうとしてたの?」

箸を動かしながら尋ねると、照れ臭そうにさっきまで抱えていた台本を見せてくれた。

「…映画のお仕事を戴いたんです。
初めての映画なので、すごく嬉しくて…。
そ、それに…!
私がヒロインだって言われて…!
もう、夢じゃないかって思って…だから…。」

キラキラした目で、本当に嬉しくて仕方ないのは良く分かった。
あまりの可愛さに触れたくなる衝動を抑え付けながら、精一杯理性の紐を締め付けた。

(可愛い、可愛すぎて、もうどうしてくれようこの娘は!)

「…そう、良かったね。
どんな映画?」

「それがまだ台本読んでないんです。
新開監督の次回作で、直々にオファーして下さったので、断る理由もありませんでしたから。
それに、以前先生に言われたんです。
“役者としての欠点を克服する為にも、役所にこだわらず、好き嫌いしないでありとあらゆる役をこなしなさい”って。
だから、この際内容にこだわらずにやれるだけ精一杯やってみようと思いました。
こんな理由じゃ…駄目ですか?」

だからそんな潤んだ目で見詰めないで欲しい!
こっちの理性が揺らぐからっ!
…などと目の前の青年が思っているとも知らずに、キョーコは話し続けた。




二人が揃ったらうだうだですよ~(>_<)
…ちゃんとやろうよ、自分。