躊躇いはあったものの、隠し立てしても無駄だと悟った僕は、不破君と遭遇した3回の出来事と、間にあった敦賀君と京子さんの穏やかで幸せそうな光景を包み隠さず説明した。

「…そんな場面を目撃してましたから、そういう仮説を立ててみたんです。
ただ、僕らは不破君が京子さんにした仕打ちが許せなかった。
いくら幼なじみだからって、いいえ、幼なじみだからこそやっちゃいけない事です。
京子さんに酷い事をしたその理由と、少しでも罪悪感があるかが知りたくて、僕らは春樹に音声の隠し録りを頼みました。
…結果は…、僕らの腹の虫が治まらないと思うに足るものが録れたので、ここは敦賀君に協力して貰うつもりで社さんを引っ張り込んで計画書を作り、出来上がった時点で社長さんにお願いしようとしていた矢先にご招待を賜った、という訳です。」

一通り話を聞いた宝田社長は、暫く考え込んでいたが不意に顔を上げるとにんまり笑って膝を叩いた。

「いいだろう!
最上君がラブミー部から巣立つきっかけになるかもしれん。
それに芝居ではない、あくまでもプライベートでありながら相手の気持ちを無視して、乙女の初めての唇を無理矢理奪うなど言語道断!
そもそも役者であろうとうら若き乙女のファーストキスたるもの、愛があってしかるべきだ!
不破尚という男、このローリィ宝田が正義の鉄槌を下してくれる!
私もその計画、全面的に協力しようじゃないか!
さあ、今すぐ始めよう!」

やっぱり。社さんの言った通りになった。
慌てて社さんが宝田社長を止める。

「ま、待って下さい!
計画を進めて下さるのは有り難いですが、まだ色々と準備が…!」




…うちの社長さんは何処まで暴走するでしょう。