結局3人は、言い出しっぺの僕をすっかりのけ者にしてスケジュールの調整を済ませ、あっという間に解散してしまった。
そして2日後の夕方。
僕も気になってはいたが、仕事を抜け出して覗きに行く訳にもいかないので、自分の方の休憩時間中、待ち合わせ時間の少し前に、春樹の携帯に電話を掛けた。

「もしもし春樹?僕だけど…今いい?」

『あら、啓文。
どうしたの?』

春樹の軽やかな声が耳に響く。

「…うん、今日の事が気になって。」

僕の言いようにクスクス笑いながら、春樹は僕を宥める様に言葉を紡ぐ。

『大丈夫よ。
新開さん達が参加してくれなくても、私が参加するし、ね。』

「え、だって春樹は“不破尚”のプロデューサーだから…。」

『参加しないなんて言ってないわよ?
どういう攻め方をしたら、尚が反省して成長の糧にできるか、方法について悩んでいただけで。
だから今日の話の内容によってどの程度で済ませてやろうかなぁ、と思ってるの。』

戸惑う僕に、春樹はあっけらかんと言ってのけた。

『乙女のファーストキスを、くだらない理由で奪った報いはきっちり受けて貰いますから♪』

「は、春樹さん?
不破君の言動次第で、お仕置き度合いが変わるって事、かな?』

声音は明るいけど言ってる事の物騒なこと!
思わず上擦った僕の声に、春樹は更に続けた。

『安心して、啓文?
貴方そっちのけで話が進まない様にちゃんとICに録音しておくわ。
夜、空いてる日をメールして頂戴?
またいつものお店を予約するから。
じゃあね。』

新開さん達が間違いなく参加するの前提の言い方をして、春樹は電話を切ってしまった。

「は、春樹?
もしもし?」

諦めて電話を切ると僕は無意識にため息をついていた。
そして何気なく晴れた空にかかりはじめた暗雲に想いを馳せた。




ようやく尚が出てきそうです。

加筆修正しました。2月10日(蓮誕ですね。)