その年、近所の大きな公園で花見をしようということになった。
この人達を公共の場に放つなんて、嫌な予感しかない。

桜の木は数本あったが、花見をしている人はいなかった。
公園内に駅があるので、人通りは多かった。

シートはもちろんブルーシート。
ここまでは、一般的だ。

暗かねぇ。
暗か。
 

投光器持って来い。

寒かねぇ。
寒か。

垂直シート持って来い。

あの木とあの木で、、、
うーん、、、パイプとクランクも持って来い。

あっという間に快適空間が完成し、若い衆たちはドヤ顔だった。
シートの四方壁は高さ2mほど。まるで工事現場の様で、花見という情緒的な気分は一切消えた。

しかし、外から見るとそれは工事現場ではなく、投光器の強い光に宴に浮かれた若い衆たちが影絵のように映し出された巨大灯籠だった。


一瞬、情緒的かもと錯覚したが、通りがかりの人達がギョッとした表情するので、私には、もう中に戻る勇気は無かった。