2007-10-25 14:10:04

雹ふる誕生日 (NOLS)

テーマ:NOLS ALASKA

奥歯が痛い。

また虫歯か親知らずか、と、憂鬱な気分で歯医者にいった。


「虫歯じゃないですよ。力いれて噛みしめすぎです。気合いいれすぎじゃないですか」


・・・ふーむ。気合い?


***


さて、NOLS話まだ続く。



katy


Day17、7月18日は、Katy、24歳の誕生日。でも、この夜、こうやって、誕生祝いをするまでには、大変な1日が待っていた。こんな誕生日、一生忘れないってくらいの、大変な。




今日もまた、12キロを歩かねばならない。しかも、ルートは峡谷沿いだ。何回、徒渉が待っているのだろう、と思うと、憂鬱になる。


そう、川を渡る、というのは、楽しそうにみえて、これが全然楽しくない。アラスカの、氷河から始まる川の流れは冷たく速いので、一番気を使う箇所なのだ。まずは荷物を下ろして、一番易しく渡れそうな場所を、徹底的にスカウト(下見)する。時には、下流に1時間、上流に1時間歩くこともあるくらいに、徹底して。そしてようやく決まった、比較的安全そうなその場所も、いざ渡るときには、バックパックのベルトを外し、3人一組になって、ゆっくりゆっくり渡る。もちろん、靴は履いたまま。


時間はかかるし、気は使うし、靴のなかはびしょ濡れになって気持ち悪いし、いいことなんて全然ない。



rivercross



というわけで、朝から憂鬱になっているうえに、昨日から降り続いている雨で、服は全部湿っているし、荷物は水分含んで重たいし、もう、前回の休息日から数日経っていて、みんな、疲れもピークに達していた日だった。



そんな日にこそ、悪いことは重なる。


ようやく何本目かの川を渡り終えたその時、メンバーの一人が、バックパックの横につけていた熊スプレーを誤発射した。プシューーーーーーーーーーーー、と、嫌な音が、川の流れの音より一段高く響き渡り、あたりは刺激臭に包まれる。


逃げろっ!


熊撃退スプレーは、アラスカを旅するときは、手放してはならないお守りのような存在だ。が、唐辛子を原料とする刺激物が入っており、命には別状ないが、相当に強い匂いと、刺激があたりに充満し、目はシバシバ、喉は痛いと、人間にとっても楽しいスプレーではない。


匂いが収まるのを待って、スプレーを被ってしまった服やバックパックやらは、手分けして、川の水で全部洗う。発射してしまった彼は、すっかり意気消沈し、みんなも、ショックで、だんまりになる。


その後も、何度か道を間違えながら、夜7時、疲れ果てて、その日のキャンプ場へ到着した。


と、その瞬間、風が吹いてきて、雷が鳴り始め、そして、雨でなく、雹が降ってきた。バチバチと、パチンコ玉の大きさもあろうかという、雹が。


落雷を除けるためバックパックの上に乗り、その、不安定な30センチX80センチ四方の荷物の上で、かがみ込むように俯せになって、その雹が通り過ぎるのを待つしかなかった。


安全で快適な屋根の下に入りたい、と思ったって、周りには何もない。どんなに疲れ果てていても、自然は笑っちゃうくらいシビアに、容赦なく、疲れた体に雹を叩きつけてくる。何ができるわけでもなく、ただただ、バックパックの上で小さくなっているしかないのだ。


目の前で縮こまって雹に打たれている、誕生日ガールのKatyを見ながら、自然のあんまりの無慈悲な仕打ちと、人間の小ささに、笑うしかなかった。パチパチと雹にあたりながら、人間の、小ささと無力さに、何故か感動していた。


その雹は、結局30分降り続き、そして、雨雲は、また足早に去っていった。





rainbow


厳しい嵐もあるけど、だからこそ、見える虹がある。



疲れ果てた1日だったのに、散々だったね、と慰めた誕生日だったはずなのに。何故か今は、ニヤニヤしながら思い出す。味わおうと思ったってなかなか味わえない、相当、素敵な誕生日だったんじゃないか、と思うのだ。


あのケーキも、あの虹も、

そして、みんなからのハッピーバースディ、の歌も。





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