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あれは月夜のことだった。
丘の上で咆哮する一匹の魔物。そして、それを取り巻く騎馬隊の群れ。
膝をついた姿勢でそれを見ていた私は、涙を流していた。
そんな私の横に、あの男は静かに立つ。
―あれがお前の伴侶の末路だ
私は首を振る。涙が周囲に散らばる。
―ひどい男……。あの人が、私たちが、何をしたって言うのよっっ
―お前の巫女の能力、我が貰い受ける
全身の血が引く。この男にもう一つの目的があったことを、今になって覚ることができた。
―まさか………………
冷たい目で私を見下ろす男は、青褪めた私に唇の端を吊り上げて見せた。
―ああ。言ってなかったか。今宵より、お前は我の物だ。我の子を産め
目の前が真っ白になった。
―………そんな………、それだけのことで、あの人を………?
―言えば、我に従ったか?
―従ったわ………
女の権利が存在しない時代。男同士で会話が進むのは仕方がないことだとしても………
―私が貴方の妻になることであの人が化け物にならないってわかっていたら、私はこの身を捧げたわっっっ
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………私は、ぼんやりと立ち上がった。
両頬に流れる涙をそのままに、目の前に舞い降りてきた能力者三人を見据える。
泣き叫ぶ自分――いえ、あれは、私であって私ではない女性――の姿に、私は記憶の箱が開くのを意識した。
―涼子の住むこの家は、あの社の門番を代々してきたんだよ
―呪いを受けて失われた貴方の綺麗な魂、私は、どんなことをしてでも取り戻すから
「ようやく現れたのね。能力者さんたち………」
…やっちゃいました…いきなりファンタジーでごめんなさい…なんとか現実に戻って次回へ続く