eB 第1話【解ける封印~E.S.P.er Boy~】(13) | ハッピーで行こう!~120%な日常

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小説を書いてましたが、諸事情により、最近は普通の日常を公開中。

 キッチンの片づけ(というか、壊れたものを集めてゴミ袋に入れるだけの作業)が終わると、兄貴たちはそれぞれ「ファミレスへ行く」と言って出て行ってしまった。俺もその波に乗ろうとしたのだけれど、少し話がしたいから残るように、と父さんから引き止められた。振り返れば、いつになく真剣な表情の両親がいて。そんな顔を見た俺は、そのまま外に出て行く訳にもいかなくなり………。


「大丈夫?」


 兄貴たちが家を出ると、母さんは泣きそうな顔で俺の手を握った。


「う、うん………」


「気分が悪いとか、そういうところ、ない?」


「さっきまで熱あったんだけど、もう大丈夫だよ」


 俺は母さんに抱きしめられた。


「良かった………」


「母さん?」


 頭一つ分低い自分の母親を見下ろし、俺は困った。俺にしがみついている身体は小さく震えていて、泣いているとわかったからだ。母さんの後ろにいる父さんに、顔を向ける。


「ど、どうしよう……」


 すると、父さんは母さんの肩に手を置いた。


「五樹が無事で、良かったね」


 母さんはその言葉を聞くと、俺を抱く手を外した。涙の溢れた目を拭い、ごめんね、と俺に謝る。


「お母さん、五樹が何ともなくて、安心しちゃった」


 泣いたことをごまかすように笑う母さんに、俺も困った表情を消すことにした。


「あはは。なんだよ、もう。大げさなんだからあ」


 笑いながら、リビングの真ん中にあるソファに向かった。


―少し話がしたいから、五樹は家に残りなさい


 そう言った時の父さんの表情は硬く、その周囲に生まれた妙な空気は、今までこの家では感じたことのない皮膚を軽く刺すようなピリピリとした刺激を持っていた。重い空気から逃れたく、リビングに辿り着いた俺は、わざとソファを飛び越えるような形で座った。


「突然で驚いたかもしれない」


 座ると同時、父さんの声。


「力が出ないうちに話すこともできたんだが、不安がらせるのもどうかと思ってね」


 俺が座るソファの横を通り過ぎ、前にあるソファへ父さんは腰を降ろす。膝の上に肘をつき、両手の指を組んだ父さんから見つめられ、俺は恥ずかしくなった。


「なんだよ、それ。いきなり物が浮かんだ時は、死ぬほどびっくりしたんだから。兄貴たちも超能力者だったんなら、前もって教えてよ」


 身体を横に捻って、口を尖らせる。父さんは微かな笑みを浮かべると、目を閉じた。


「それは悪かったと思ってる。でも、君は不確定要素だったから」


「はあ? なにそれ?」


「君はすでに力が目覚めてたんだよ」


「は?」


「でも、その力は封じ込められた。その反動で、君の『力に関する記憶』も消えた」


「ええっ?!」


 飛び上がるほど驚いた。そんな俺の前、父さんはゆっくりと目を開けた。


「一昨年の十二月のことだ。母さんが部屋で倒れている君を見つけた。母さんの悲鳴で駆けつけた私が抱き起こしたらすぐに目を開けたから大丈夫だと思ったんだが、夕方になって君の異変に気づいた」


「ちょ、ちょっと待ってよ。そんな、俺、ぜんぜん………」


「覚えてないだろうが、事実なんだ。何があったのかはわからない。ただわかっているのは、一年半前が五樹の本来の覚醒時期だったってことと……」


 言いかけて、父さんは口をつぐんだ。何かを考えるかのように、視線が俺から逸れる。どうしたんだろう、と思えば、父さんの口が動き出した。


「……話は変わるんだが、今日、学校で何か起きなかったかい?」


 言われて、思い出す。


「あ、そうだ。頭がすごく痛くなって、午前中、ずっと保健室で寝てたんだ」


「その時、何か思い出さなかったかい?」


「思い出したって言うか………」


 首を傾げ、制服のズボンのポケットに手を突っ込んだ。


矢印矢印 (14)へ続く



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