その女アレックス (文春文庫)/文藝春秋
¥929
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誘拐され、格子状の小さな木の箱に監禁された非常勤の看護師:アレックス。捜査の指揮を執るのは、かつて妻を誘拐され殺されたパリ警視庁犯罪捜査部警部:カミーユ・ヴェルーヴェン。身重で誘拐された妻:イレーヌの捜査に携わり、漸く見つけたとき、彼女は惨殺され遺体となっていた。その後、入院を経て復帰するも、誘拐事件は避けてきたカミーユ。しかし、上司の部長:ル・グエンは、カミーユに選択の余地を与えなかった。過去の経験から、誰よりも時間が勝負だと知っているカミーユは、以前、部下だったルイ・マリアーニとアルマンの二人の刑事を指名する。地道な捜査の末、廃病院の管理人:ジャン=ピエール・トラリユーに目星をつけるが……。



少し前に、話題になったこの文庫、図書館の棚で静かに4冊並んでいたので、今さらですが、借りてみました。

凄い!!

冒頭、誘拐の被害者だったアレックスが、一転して硫酸を使った連続殺人事件の加害者に、そして、彼女の壮絶な過去が明かされるに至ってまた。。。


うーん、これ、書くと、どの部分でもネタバレになってしまい、紹介し辛い困った汗作品です。
今までレビューとか全く読まずスルーしてきて、白紙の状態で読めたのが良かっただけに、書けないです。



舞台は凱旋門パリですが、何故か、私の中では、最初から最後までアメリカアメリカのイメージでした。
海外ドラマっぽいからかなぁ。
そして、拙い私のミステリィ読書歴でも、ついていける程度(カミーユがオークションにかけた母の自画像の贈り主が分かるくらい)で進んでいくので、読みやすかったです。


登場人物も魅力的で面白かったです。

まず、カミーユ。
著名な画家アートのモー・ヴェルーヴェンを母に持ち、その母のニコチンタバコ依存症のため、彼女から画才と低身長を授かります。
身長百四十五センチ。
背が低く、痩せていて、しかも禿げているが、肝が据わった男だと誰もが認めるカミーユ。
今は、猫のドゥドゥーシュと暮らしている。

彼と好対照な上司である犯罪捜査部の部長:ル・グエンは、カミーユとは八十キロの体重差と三十センチの身長差を持つ巨漢。
頬はハムスターのように膨れていて、どういうわけか女にラブラブもてる。
四度目の離婚をして、今は独り。
しかし、同じ女性と何度も結婚しており、いつもカミーユが立会人を務めるはめに。

カミーユは、椅子椅子に座ると足が着かずぶらぶらで、ル・グエンは、椅子椅子が壊れないかと用心しいしい腰かける。
コミカルで印象に残り易い設定ですね。

会えば口論で始まる二人ですが、本質的には同じタイプの人間で、それぞれのやるべきことを心得ているというのも好感度高いです。


そして、カミーユの二人の部下も、これまた対照的で個性的。

とんでもないお金大金持ちのルイ・マリアーニは、いつも、品よくブランド物のファッションでキメていて、物腰柔らかい知的なイケメン。

対するアルマンは、磨いてはいるが踵の減った靴を履き、新しく配属された新人からは、必ずタバコをものにし、人に奢って貰っても、奢ることは決してないという非情な倹約家。


この超個性的な四人の犯罪捜査チーム、プラス、第一印象は感じ悪っむかっだっただけに、ラストはなかなかいいやん合格に変わる予審判事:ヴィダールの事件解決までを描く確信的冤罪?ミステリィ?
いわば、消極的”必殺仕事人”って感じかなァ。


本「まあ、真実、真実と言ったところで……これが真実だとかそうでないとか、いったい誰が明言できるものやら! われわれにとって大事なのは、警部、真実ではなく正義ですよ。そうでしょう?」



もちろん、アレックスの想像を絶する生い立ちに叫び驚愕し、そのタフさの理由に気づかされるという怖い物語がメインなのですが、それとともに、母や妻との不幸な思い出から立ち直るカミーユの再生の物語でもありました。

破滅と再生。
こちらも、また対照的ですね。
この差は、やはり、ひとりぼっちか、よき人びとに囲まれているか なのではないだろうか。
そんなことを、ふと思いました。



本 要するに忘れることだ。欠点とはそういうものかもしれない。ある時点から本人は忘れ、気づくのは他人だけになる。




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