日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08)/河出書房新社
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町田誤訳じゃなくて、語訳の「宇治拾遺物語」。

例によって例の如く、町田節炸裂デス。


「宇治拾遺」ってどんな物語だっけ?
図書館の蔵書検索の「町田康」でヒットしたので、思わず予約をポチっちゃったけど、難解だったらどうしよう目と、ちょっとドキドキドキドキ。


<奇怪な鬼に瘤を除去される>
<雀が恩義を感じる>
<長谷寺に篭った男が利得を得た>

ありゃ???

ハイ、そーなんです。
『瘤取りじいさん』
『舌きり雀』
『わらしべ長者』


そして、また、
<鼻がムチャクチャ長いお坊さん>
<平中が本院侍従にやられる>

こちらも、タイトルからも判るように、
『鼻』
『好色』

芥川龍之介の名作ですよね。
元は、ここだったのね。


そして、下ネタ多し。目汗
これじゃあ、教科書には載せられないな。
尾篭な話が多すぎデス。

でも、これが、なんだか馬鹿馬鹿しくて、おもろい。
そう、おもしろいから、今日まで残ってきたんでしょうけどね。


ありがたいお経を読むお坊さんだったり、身分の高い青年貴族であったりが、落語の小噺のようなコントとしか思えない所業を繰り広げます。

上方落語のしゃべくりのように、もっちゃりした大阪弁。
かと思うと、その辺のコンビニにいるようなニイチャン言葉だったり。
基本、大阪弁やね。
まぁ、宇治は大阪に近いし、別にいいねんけど。

古典が、ぐっと身近に迫ってきます。
昔も今も、人間ってあほらしいほど変わらないなと、思わずニヤけてしまいました。


例えば、<藤大納言が女に屁をこかれた>話。

ある夜、大納言が美しい女性に迫り、抱き寄せようとしたしたところ、突然放屁され、ショックのあまり出家を決意。
「マジ、出家しよ」と。

なんで出家なん?
よーわからへん。
でしょ?

しかし、よくよく考えると、

「けどあれですよね。出家するということはこれまで積み上げてきたものを全部、捨てるっていうことですよね。たかが、女の屁ぇ一発でそれって、どうなんだろうか。実際の話。恥ずかしさのあまり女が出家するというのなら話はわかりますが、女が屁をこいて僕が出家するっておかしくないですか? うん。絶対、おかしい。こわっ。これでマジ、出家してたら、どうなってたんだろう、俺。やばすぎでしょう。あぶねぇ、あぶねぇ。危うく、とんでもないことするとこだったわ」

きっと原文は、もっと簡潔な文章なんでしょうけど、そのあほらしさとともに、大納言の心情がありありと伝わってくるではありませんか。


そして、大納言は出家を思いとどまり、その後、女がどうなったかは不明で終焉。

この女の消息を突き放すしれっとした終り方も、あっさりしすぎ。
えっ、そんで終わり?と思わず、脱力。
ずっとずっと昔の物語なのに、その斬新さに驚かされます。


こんな話が33話、セレクト。



今回は『宇治拾遺物語』と『日本霊異記』(伊藤比呂美訳)(←これまたエロエロ なんだけど、最後に必ず仏教の教えで結んでいる)しか読めなかったけど、もう一度借りて併録の『今昔物語』(福永武彦訳)と『発心集』(伊藤比呂美訳)も読んでみたいです。

↓なんか宇宙人:ジョーンズの報告みたいやね。



本 人間というもの、いつも欲望に突き動かされて、俗悪で強欲で、性愛の誘惑には弱く、それでいて一身を捨てて他人の幸福を願うこともあり、その生態はまことに雑然とし、混乱・矛盾している。
説話というのはそのすべてを表現できる形式なのだろう。(個人編集:池澤夏樹 解説より)




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