青子の本棚

「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。


青子が読んだ本の感想ハートです。




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それでも三月は、また/谷川 俊太郎
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天皇をはじめ皇族は京都御所に幽閉され、内閣総理大臣はTVで原発廃止を叫んだため、拉致されこの世から姿を消した。二〇一五年、日本政府は民営化され、テレビ局は乗っ取られ、インターネットは使えなくなり、電話もかけられず、手紙も届かない。日本に着陸すると、放射性物質が機体に付着すると言われ、飛行機も飛ばなくなった。そして、二〇一七年に太平洋大地震が起こり、日本の詳細は不明となる。





スゴイねぇ、コレ。叫び
とてもラジカルなストーリーです。



主人公のわたしは、著者を思わせるドイツに永住権をもつ、在独三十年の日本人で、日本に住む弟家族がいます。


わたしは、アメリカから日本へ行く便があると聞き、渡米するのですが、大阪行きのチケットを売るというチャイナタウンの八百屋の奥にあるその旅行会社はすでになく、むなしくドイツに戻ってきます。




日本に対する世界の対応は、同情から差別に変わり、わたしも、日本のパスポートを見せると怯えられ、いまや日本は世界のハミゴ。



わたしは、ドイツの永住権を持っていて、ヨーロッパ共同体のパスポートを取得できるのですが、なぜか申請する気になれず、赤い表紙に菊のついた日本のパスポートを今も手にしています。


日本のパスポートを手放しさえすれば、嫌な思いをすることもぐんと減るだろうに、手放せないでいるわたし。
そんなわたしの未練に、日本という国への思いが象徴されているように思います。




日本の情報はすべて遮断され、どうなっているのか皆目わからない状態の中、日本へ密航してきたというポルトガル人が書いた本:「フェルナン・メンデス・ピントの孫の不思議な旅」が紹介されます。



わたしは、限りなく怪しい、なんともうそ臭い法螺話だと思いながらも、その内容に、愕然とさせられます。


うまいですね。
嘘つき本で、日本の未来を憂えるなんて。




その本によると、日本人はまるで、イザベラ・バードの『日本奥地紀行』 のような生活に逆戻りしています。

現代風にデフォルメされた江戸時代と化している日本のなか、若い人から順に姿を消していき、彼らの介護をしているのは、老人たち。





本 わかいという形容詞に若さがあった時代は終わり、若いと言えば、立てない、歩けない、眼が見えない、ものが食べられない、しゃべれない、という意味になってしまった。





そして、次の地震で、新たに四つの原子炉が壊れ、しかし、民営化された政府からは、何ももれていないとの発表が。


当然、人々は、もうなにも信じない。





なんてったって、嘘つき本に書いてある内容ですからね。
私たち読者だって、そんなに簡単に、信用なんてできませんよね。


きっと、昔、学校で習った歴史の教科書に載ってた、デフォルメされた日本を描いた風刺マンガみたいなもんですヨ。
そんなワケないじゃないですか、ねぇ。



きゃはははははははははははは。。。




でもね。

ちょっぴり心配、この国の未来が。








『それでも三月は、また』は、17人の詩人・小説家が、東日本大震災を想い、創作したアンソロジーです。


谷川俊太郎  『言葉』
多和田葉子  『不死の島』
重松清  『おまじない』
小川洋子  『夜泣き帽子』
川上弘美  『神様2011』
川上美映子  『三月の毛糸』
いしいしんじ  『ルル』
J.D.マクラッチー  『一年後』
池澤夏樹  『美しい祖母の聖書』
角田光代  『ピース』
古川日出男  『十六年後に泊まる』
明川哲也  『箱のはなし』
バリー・ユアグロー  『漁師の小舟で見た夢』
佐伯一麦  『日和山』
安部和重  『RIDE ON TIME』
村上龍  『ユーカリの小さな葉』
デイヴィッド・ピース  『惨事のあと、惨事のまえ』




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