未完:時代物 冒険小説@第1話「あやかし掃討」 | 「蒼い月の本棚」~小説とハムスター(ハムちゃん日記はお休み中)~

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趣味で小説を書いています。絵を描いたり写真を撮ったり、工作をしたり書道をしたり、趣味たくさんです。古典で人生変わりました。戦国時代&お城好き。百人一首とにかく好き。2016年、夢叶って小説家デビューできました。のんびり更新ですが、どうぞよろしくお願いします。











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…………………「あやかし掃討」第1話













なぜ私がここに?





目覚めれば、見覚えのない景色。




むせ返るような、焦げた匂い。
迫り来る炎。


硝煙に巻かれ、息が苦しい。

ガラガラと何かが崩れる音。







ここは、一体…?


ガタンと目の前の襖が倒され、獣のような目をした男が現れた。



「見つけたぞ、早くこちらへ。」



理由など分からぬまま、男に手を引かれ、燃え盛る炎の中を突き進む。








途中、行く手を阻むように現れる無数の影。



男は、声無きままに、縦横無尽に切り捨てていく。





「まーーーーてーーーーー




歪んだ低い声が、地響きのように唸りをあげる。


紅蓮の炎は、蛇のごとく追いすがり、大きく口を開けて、私たちを飲み込もうと巻き上がった。




「こっちだ!」





男は私を抱えるようにして、猛火の中を駆け抜ける。








ザザッ…




男の足が止まった。




行く先を閉ざされて、後ろを振り向けば、迫りくる炎の大蛇。




背中から吹き付ける熱風に煽られて、身体が前のめりになる。







眼下は、暗黒の川。


轟々と、渦巻く水の流れる音がする。




「くそっ!」






男は刀を構えたまま、大声で叫んだ。




「飛べっ!」




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暗黒の激流に足がすくむ。




「行けっ!必ず助ける!俺を信じろ!」






私は大きく息を吸い込み、闇に向かって身を投げた。






ザンッ!




高く水しぶきが上がり、ゴボゴボと身体が沈んでいく。





息が…できない…

身体に力が入らない…








朦朧とした意識の中、突然腕を掴まれ、唇を押し当てられた。



苦しかった息が楽になり、その腕にしがみつく。




「必ず助ける。」



頭の中で、そう聞こえた気がした。