以前から、アトピーに関与する免疫細胞の研究がすすめられています。
なかでも、ヘルパーT細胞という免疫細胞は、大きなトピックスとして何度も扱われてきました。

前回の、【アトピーの病態基礎講座】 アトピーのアレルギー反応を読んでいただければ分かりますが、Ⅳ型アレルギーの説明に出てきたTリンパ球(ヘルパーT細胞はTリンパ球の中に分類される免疫細胞)です。




ヘルパーT細胞(Th細胞)は、ほんの10年くらい前までは、
Th1Th2の、2種類にしか分けられていませんでした。
そして、アトピー性皮膚炎はTh2優位の免疫応答を示す病気として知られていたのです。つまり、

アトピーのヘルパーT細胞

という関係性の病気だと思われていました(Th1/Th2バランス)


Th2は、IL-4・IL-5・IL-13といったシグナル(他の細胞に送る「信号」です)を出しています。
このシグナルを好酸球が受け取ると、Th2の存在する病変部に好酸球が駆けつけてきます。
例えるなら、沈没船がSOS信号をだして、救助船がくるようなイメージです。


アトピー性皮膚炎の患者さんの血液検査では、よく好酸球が上昇しているので、Th2優位の病気という説明は、とても納得できるものです。




さて、Th2優位の病気ならば、「Th1/Th2バランスを戻してあげれば、アトピーがよくなるのではないか?」と考える研究者が出てきます。
もう30年くらい前から、そういう研究がされています。
しかしながら、うまい結果が出ているものは今のところありません。




Th1/Th2バランス」の仮説は非常に分かりやすかったのですが、最近では、単純にTh2優位の病気と片づけるわけにはいかなくなりました。
10年くらい前から、ヘルパーT細胞の分類はさらに細かく細分化されており、Th17Tregといった新たなヘルパーT細胞の役割が分かってきたのです。


現在では、
急性期⇒Th2優位、Th17優位
慢性期⇒Th1優位

と考えられており(1)、まだまだ色々と研究されている状況です。




(1) Souwer Y, Szegedi K, Kapsenberg ML, de Jong EC. IL-17 and IL-22 in atopic allergic disease. Curr Opin Immunol. 2010 Dec;22(6):821-6.





ここで学んだことが直に治療に繋がるわけではありません。
勝手な自己解釈による自己流治療は、しないでください






 【アトピーの病態基礎講座】 皮膚バリア
 【アトピーの病態基礎講座】 アトピーのアレルギー反応
 【アトピーの病態基礎講座】 アトピーのアレルギー側面 VS. 非アレルギー側面


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