「お風呂‥ありがとうございました」

私達は寒い中での公園での告白劇からすっかり冷えてしまった私達はその後のデート(赤面)もそこそこに帰宅の途へ着いた。

でも帰宅と言っても実際の所私は今現在敦賀さんのマンションに居てお風呂を借りていたりするのだけれど。


「ちゃんと温まった?俺のだからデカイけど。はい‥上着にどうぞ?俺のセーター」

お気に入りの羊のポンチョは思いのほか外気に晒され冷たくなっていた為、コートと一緒に暖を取らせて乾かしていた。でも

(もこもこして暖かいけど、何か照れくさいなぁ)

それに下はスカートとタイツを穿いていたものだから敦賀さんのセーターが大きいのもあり丁度ワンピース丈になりどうにも気恥ずかしく感じた。


(前もパーカー貸して貰ったのに何で今こんなにドキドキしちゃうんだろう?)

すると何故かジッと無表情で私を見つめている敦賀さんと目が合い私は思い切り動揺してしまった。


「な‥何か?」


「ん‥?いや‥前に服貸したことある筈なのに何か妙にドキドキするなと‥」


(‥‥!!)

顔色一つ変えない敦賀さんの表情からは全く想像もつかなかった言葉が出て私はカチーンと固まってしまった。


(‥私、どんな反応すれば良いんだろう?恐れいりますも、ありがとうございますも違う気がするし(赤面))

私が無意識に茹で蛸のように顔を真っ赤にさせていると敦賀さんは自分の発した言葉の意味に気付いたらしく「違う‥違うからね?俺、疚しいことなんて一つも考えてないからね?」と何やら慌てて弁解してきたけれど私は何のことか分からず「はい‥?」と曖昧に返事をするのだった。

そしたら何故かホッと安堵した表情をした敦賀さんにポフポフとソファの隣に来るように示唆され何の気なしに私は素直に隣に座った。すると

ギュッと突然抱擁され、私はまたしても石膏のように固まってしまった。


「つ‥敦賀さん?」


「‥ごめんね?緊張するよね?でも君が俺の傍に居ることが夢じゃないって、実感したくて」
その言葉を象徴するように敦賀さんの抱擁は私の存在を確かめるような抱擁で。

まるで幼子のような彼にキュンとした私は言葉の代わりに抱擁を返し‥元々お風呂に入ったこともプラスしてそのまま彼の匂いと温かさに安心して眠ってしまい。

私は夢じゃないことの実感の代償に敦賀さんから貴重な睡眠を奪ってしまったことに気付かないままなのだった。