『支えになりたい』

口で言うのは簡単で、けれど果たして私は貴方の力になれただろうか。


『私じゃなくても良い』

その言葉で散々逃げようとしたのに『君じゃなくちゃ駄目だ』なんて言葉‥反則だと思った。
【人は自分に似ている人を無意識に探し求めている】と昔誰かが言っていたけど私は最初それを嘘だと思った。

自分と似ていないから惹きつけられまた好きになることが出来るのだと信じていた。

でも‥完璧だと思っていた貴方が闇に呑まれ闇に怯える姿を見て。

そして私のことで表情をクルクルと変え(傍目にはポーカーフェイス)感情を露わにする姿を見て。

いつの間にか私は無意識に同じものを持っている人に惹かれていることに気付いた。

そして、いつしか私の願いは支えになりたいという願いと共にある想いを抱くようになったのだった。


◆◆◆


『君の目標でありたい』

口にするにも実行するにも一筋縄では行かない目標を果たして俺は出来ただろうか?

依存なんかじゃなく慕って慕われて互いに切磋琢磨しあって。けれど、がむしゃらに頑張る余り‥時折、君の自信を喪失させる事態も引き起こして傷付けたこともあった。


『私じゃなくても良い』

そんな気弱な言葉で俺から立ち去ろうとする君を俺は俳優であることも抜きにして君を俺の傍に繋ぎ止めた。


『君じゃなくちゃ駄目だ』

格好や立ち振る舞いなんてどうでも良かった。そんなのを気にする位なら、最初から俺は一人を貫くべきだと感じた。

だって俺は俳優『敦賀蓮』である前に一人の男でもあるのだから。

昔、父さんが言っていた。人を好きになることは理屈じゃないと。

頭の良し悪しや顔の造形、そして性格。

それを言ったら様々な役柄を演じている俺達はしっかりと自分を持って居なければ、いつの間にか役に引きずられ‥いつしか自分を見失ってしまう。

だから、いつからか俺は君の目標でありたいと願うと同時にある一つの想いを抱くのだった。

◆◆◆


「敦賀さん‥私は貴方が貴方で居られる場所になりたいです」

「キョーコ。俺は君が君らしく居られる場所でありたい」


支えでありたい。

目標でありたい。

けれどそこには本当の貴方(君)が居て欲しい。

でもやっぱり時には良い所を見せたくて背伸びもしてしまうだろう。意地も張ってしまうだろう。

けれどこの卒論は一生を掛けて果たしたい。

君に還る場所になることを。