俺の仕事用の携帯に、天宮さんからの一通のメール。

開いた受信メールの件名『SOS』の文字に俺はドキッとしてその中身を開けた。

そして俺は緊張した面持ちで天宮さんからのメールを読んでいく。


(‥なるほど。これは俺も予想していなかった展開だった)

天宮さんのメールの内容に、だんだんと自分の表情が険しくなっていくのが分かった。


(本当は‥天宮さんからキョーコの仕事内容をメールして貰って、その中できっかけが掴めそうな場面になったら友情出演を監督に打診するつもりだったのだけど。だいぶ話が変わって来たな)

そう。

俺が虎視眈々と狙っていたのはキョーコとの『共演=トナリ』だった。


(友情出演で構わないから‥遠回しにそれとなく言ってみるつもりだったけど‥これは急がないと不味いな)

女性陣達がおののく程の盛り上がりを見せる共演の男性達に、天宮さんも不安を感じたようだった。

となると‥当事者であるキョーコの不安や葛藤は一体どれほどのものか。


(可哀想に‥今すぐ駆けつけて慰めてあげたいけど‥今行けばあまりに不自然すぎる)

しかしここで、まごついていれば『最後の男』役は共演者の男性の中から選ばれることになる。

しかも『アキ』ではなく『京子』自身を見ている男性達の中から。


(‥冗談じゃない!)

そんなこと許せる筈も無い。

だが、あからさまな暴走は社長に禁じられている為、俺は逸る気持ちを抑えながらこれからの対処を考え‥頭の中で何度かシミュレーションした後、行動に移すのだった。


◆◆◆


『む゛~、む゛~』

私が頭の上に乗っている雲と戦っている頃、それは何気なく訪れた。

壁時計を見ると既に時計の針は天井を指していて。

普段、こんな時間に電話をする人なんて私には一人しかいなかったから‥私は色んな気持ちになりながら着信を伝える携帯を手に取るのだった。


「‥はい。もしもし。最上ですけど」


『‥もしもし。俺だけど。ごめんね。こんな夜遅くに』


「‥いえ。まだ眠っていなかったので‥大丈夫ですけど‥敦賀さんこんな時間までお仕事だったのですか?」

やはり電話の主は敦賀さんで。私は色々打ち明けてしまいたい気持ちになりながらも無難な話題を告げた。


『ん。ああ。‥でもそしたらキョーコの声がどうしても聞きたくなって』

けれど。彼の思いがけない嬉しい言葉に、私は思わず涙を零してしまうのだった。