撮影終了後、ケインに休息を勧められ俺と社さんは休憩室で束の間の休息を取った。


『分刻みのスケジュールなのは理解しているが‥レン。ミスター社。時間に余裕はまだあるか?あるなら珈琲の一杯位奢らせて貰いたいんだが』


『ええと‥ちょっとお待ち下さいね。はい。大丈夫ですよ。コーヒーブレイクの時間位なら調整出来ます』

社さんは、スケジュール手帳を見ながらケインに予定を英語で告げた。


『ありがとう。レンはブラックだったな?ミスター社は何が良い?』


『ミスターにお任せしますよ。』


『そうか。じゃあここはエスプレッソが美味しいからそれを奢るよ‥悪いな?本当は喫茶店の方が美味いんだが自販機のもので』


『いえいえ。喫茶店に男三人の構図は目立ちますし。何より蓮が客寄せパンダ状態になって、マネージャーである俺が苦労しますので。ご配慮ありがとうございます。』


(‥‥)

社さんの言葉は丁寧でケインが気にしなくて良いような優しいものだったけれど。

引き合いにパンダ扱いされた、俺はちょっと複雑だった。


◆◆◆


『いただきます』


『はい。どうぞ』

紙コップから‥温かい湯気が立ちのぼって珈琲の良い香りがしていた。

俺、社さん、ケインはそれぞれ自分の珈琲を手に取り口に含んだ。

撮影場所は、あくまでも機械の温度に合わせて居る為、暖房は控えめだったので、やや冷えた体には有り難かった。

そして‥最初は三人で温かくて美味しい珈琲を静かに味わっていたのだけれど。


『ところで、レン。ちょっと聞きたい事があるんだけど良いか?』

不意に、ケインが口を開き、俺に質問を投げかけた。

その表情は世間話をする時の‥至って普通なものだったので、俺は珈琲を飲みながら


『良いよ。何?』

と英語で返した。


『滅茶苦茶‥ストレートに聞くけれど‥レン。お前欲求不満だろう』


『////!!』

本当に‥ケインのストレートな言葉に俺は飲んでいた珈琲を噴き出してしまった。


『うわっ!レン大丈夫か?』


「大丈夫か?蓮?」

慌てて、社さんが俺の背中をさすってくれたけれど。珈琲が、別な気管に入ったようで俺は苦しくて咳き込みながら若干涙目になってしまった。


『ケインそれはどういう‥俺がそんなだなんてあるわけないですよね?‥社さん?』

俺は苦しい中頼みの綱に縋るけれど。‥社さんは何故か明後日の方向を向いていた。