便潜血検査を侮る無かれ! | 【狭山市 安斎医院 院長ブログ】入間川徒然備忘録

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埼玉県狭山市にあります、安斎医院のブログです。
とりあえず、何でも書きます。

大腸ガン検診として広く流通している「便潜血検査」。

二日法が基本で、日にちの異なる便を二回採取するのがスタンダードです。

この結果で「便潜血陽性」と出れば、大腸の精密検査を行うのですが、精密検査は「下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)」や「注腸検査(お尻からバリウム)」が主です。
最近は「コロノグラフィーCT」という、CTで撮像してコンピューターグラフィックで立体化させる事により、大腸の内側をスクリニーニングする方法もありますが、そんなに一般的ではありません。(そもそもスクリニーニングとして適しているか?精度に問題は無いか?などの議論もありますし)


で、どの精密検査でも前処置(検査食、大量の下剤)が必要で、それを面倒だと思う方も多く、なおかつ「検査の辛さ」をご存知な方は、「やりたくない!」とおっしゃいます。

「いやぁアレは辛いよ」とか、
「苦しかった!」とか、
「二度とやるもんじゃない」など。

経験者からのアドバイス?も敬遠される理由の一つです。


確かに胃カメラのように簡便ではありませんし辛いのですが、病気を放っておいて、あとでもっと辛い思いをする可能性があるわけですから、やはり検査はしっかり受けて欲しいです。


前置きが長くなりましたが。
では、便潜血は「大腸がん検診」としてどの程度有用なのでしょうか?

分かりやすく言っちゃえば、
「便潜血陽性だとどのぐらい大腸がんやポリープが見つかる?」のでしょうか?


こういった検証は、10年以上前から行われています。
特に「陽性/陰性(定性)」でなく、「数値化(定量)」されるようになってからは、色々な角度から検証されています。


自治体で行われている大腸がん検診の便潜血は、未だ「陽性/陰性(定性)」が多いので、そういう意味では参考になり得ないかもしれませんが、「数値化(定量)」でやっている場合は、その数値をよく見てください。


以下はとある検査会社がリサーチしたデータです。

便中ヘモグロビン濃度
<100以下>
早期大腸癌 0%
進行大腸癌 0%
大腸ポリープ 17%
その他 4%
異常なし 79%

<101~150>
早期大腸癌 1.4%
進行大腸癌 0%
大腸ポリープ 27%
その他 3.3%
異常なし 69.2%

<151~200>
早期大腸癌 1.7%
進行大腸癌 0.4%
大腸ポリープ 28.8%
その他 3.4%
異常なし 65.7%


<201~500>
早期大腸癌 3.1%
進行大腸癌 0.4%
大腸ポリープ 32.7%
その他 2.7%
異常なし 60.9%


<501~1000>
早期大腸癌 5.9%
進行大腸癌 3.7%
大腸ポリープ 34.3%
その他 2.9%
異常なし 53%



<1001以上>
早期大腸癌 3.6%
進行大腸癌 10.9%
大腸ポリープ 38.4%
その他 3.6%
異常なし 43.4%



まず第一に、進行大腸癌に関しては数値が上がるのに比例してその数も増えており、1001以上では「10人に1人が進行大腸癌」という結果が出ています。
1001以上は要注意です。


早期大腸癌に関しては、201以上になると約4%に認められており、200以下の約四倍になります。
特に501以上になると有病率が約半分になりますので、実に「2人に1人は何かしら病気がある」という事になります。


ポリープについては、各濃度でほぼ均一に認められていますが、その組織型(放っておいても良いポリープか?癌化するリスクを持つポリープか?)により、その病的意義も変わってくるので、一概にはなんとも言えません。(つまり放っておいても良いポリープを見つけても、要医療とはならないケースもあります)
全て含めて考えれば、検査を受けた患者さんの28.1%にポリープがあるんですね。



冒頭で二回採取と書きましたが、回数でいうならこういうデータもあります。
<2回とも1000以上>
33% 大腸癌(早期と進行)

<2回とも500以上>
31% 大腸癌(早期と進行)


2回とも500以上の方は「3人に1人は大腸癌」という事になります。




便潜血は数多くの方がやっていますが、やはり侮れない検査です。
「前処置や苦痛」という点では大変な検査でありますが、やはりその結果でしっかり精密検査を受けることをオススメいたします。




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