インフルエンザの「二峰性発熱」について。 | 【狭山市 安斎医院 院長ブログ】入間川徒然備忘録

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埼玉県狭山市にあります、安斎医院のブログです。
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インフルエンザもポツポツと出てきていますが、皆さん「手洗い・うがい・マスク」は徹底しておりますでしょうか。

先日、インフルエンザ治療薬のエントリーをしましたが、今回はインフルエンザ治療後に見られる事がある「二峰性発熱」について触れておきます。


「二峰性発熱」とは、
『インフルエンザ治療を開始して一度解熱するも、解熱24時間以上経過した後に再度発熱を呈する経過』
の事です。


以前からそういう傾向がある事は指摘されていましたが、二年ほど前からフィーチャーされ始めました。

以下、少しまとめてみましょう。

① 発生頻度
日本臨床内科医会が発行している「インフルエンザ診療マニュアル」によりますと、直近2シーズンにおける「二峰性発熱」の発生頻度は以下の通りです。
全体:6.9%
A型:3.7%
B型:19.0%

一目瞭然ですが、B型に圧倒的に多いです。実に「5人に1人」は「二峰性発熱」を呈しているんですね。同じく熱が下がりにくい「遷延性」もB型に多く(A型:2.5%、B型:11.1%)、やはり『B型は治りが悪い』という通説の裏付けにもなります。
これはB型の方がウイルス残存が長くなるためと言われており、長いと一週間ぐらいグズグズした感じが続くことも珍しくはありません。

② 「混合感染」や「重複感染」との鑑別
もちろん熱を出す原因はインフルエンザだけではありませんので、インフルエンザで体力が落ちている所に、別の細菌やウイルスが感染する事もあります。

インフルエンザになってしまって治療が開始され、インフルエンザ自体は良くなっても、その「別の細菌やウイルス」による「混合感染」症状が出現した場合、全体的には「インフルエンザが長引いている」ように見えてしまうわけです。

この場合、実際は「二峰性」でも「遷延性」でもないのに、そういう印象を植え付けてしまう可能性が高いです。
正直、その辺りをしっかりと鑑別する検査は無いのですが、インフルエンザ治療のあとに長引く場合は、やはり医療機関への受診が望ましいと思われます。

臨床の場では医師も悩むケースですが、インフルエンザのみでは説明できない症状(嘔吐や下痢など)や、特に悪化している症状(鼻水や咳など)があれば、それに対しての対応は必要だと思います。


③ 治療不信に陥るケース
先日の「インフルエンザ治療について」のエントリーでも記載しましたが、現在は五日間使用のタミフルやリレンザ以外に、「一回投与」の薬剤の使用頻度が増えています。

「二峰性発熱」や「遷延性」になった場合、タミフルやリレンザはその時点ではまだ使用中の事が多いですが、一回投与のイナビルやラピアクタは、その時点では投与終了しているため、薬剤に対して不安を覚える方も多いと思います。

「一度良くなったけど、また悪化して来た。あの時のインフルエンザ治療薬は本当に効いているのだろうか?」と。

そういう場合には、全身状態(食欲や倦怠感)も冷静に判断し、食欲やダルさが改善傾向にあれば、インフルエンザ自体は落ち着いているとも考えて良いと思います。
そうでなく、食欲が無かったり脱水傾向が見られるならば、やはり再度医療機関を受診する事をオススメいたします。



このように「長引くインフルエンザ」は、珍しくはないのですが、「二峰性発熱」や「遷延性」、「混合感染」についても知っておいていただくと良いと思います。


安斎医院では、インフルエンザ治療をする際に、これらの点もご説明しておりますが、いまひとつ良くならない場合は、再度受診するようにしてください。




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