9月12日
Bunkamuraシアターコクーン
XC列
「コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ」
出演:阿部寛、勝村政信、麻実れい他


*ネタバレしております。


3部構成で9時間を超える大作。
ここはあえて連続で見られる土日をということで、大学の専門がもともとは「比較演劇論」だった父上と行ってきましたよ。
(今はなぜか教育系の教鞭をとっている)


入場してすぐに目に入ったのはロビーにいる蜷川幸雄氏。
「父上!蜷川先生がいる!!」
その後の父上の行動は素早かった。
パンフだけ持ってペン持ってないのに蜷川氏に突撃。
「先生!サインください」
(もう少しまともな言葉だったけど)
蜷川氏は自ら受付にペンを借りてくださってサインしてくれました。


葦なのか足なのか

もちろん、私の分も♪優しい。

私、十代の頃の夢って「演出・脚本家」だったんだよねぇ。
なので蜷川氏と直接サインいただけるのってかなりの幸福だったのですよ。
シェイクスピアを文化祭用に50分にまとめたりした中学時代が懐かしい。


座席はXCということで3列目。
センターステージなので、ステージをはさんで反対側にも観客がいるわけですよ。
っていうか、寝たら目立つ(笑)

そしてステージにはロの字型にテーブルがあり、なんと私服の出演者の皆様が座っていらっしゃる!

皆様和やかでリラックスした雰囲気。
麻実れいさんと毬谷友子さんが目の前に!紺野まひるさんが細い!
(結局、ヅカ目線)
あ、佐藤江梨子さんが立ち上がった。
父上と二人で呆然。
「あれ、同じ人間だろうか?足が長すぎないか?スタイルよすぎないか?」



客席後ろのスクリーンに年代と場所が映し出されるので、時系列の混乱はあんまりなかった。
ステージと客席の間に透き通った白いカーテン。
それがひかれてる間に場面転換があったり、ゲルツェンの「向こう岸から」の一説が映し出されたりと効果的に使われてました。

あらすじについてはBunkamura さんのサイトへ。


12:00
【第一部 VOYAGE「船出」】
バクーニン夫人(麻実れい)の浮き世離れというか、世間知らずな感じの言い回しがとても良かった。
そして4姉妹(紺野まひる、京野ことみ、美波、高橋真唯)も個性豊かだしかわいいし。
ミハイル(勝村政信)は別格。なんかうますぎる。
英語教師&カーチャ(毬谷友子)がコケティッシュで可愛い。


前半であらすじが流れていき、後半ではその種明かしがありましたよ。
深い。納得。そしておもしろい。


リュボーフィ(紺野まひる)とスタンケーヴィチ(長谷川博己)の恋愛がねぇ、純粋でねぇ。
タチヤーナ(美波)がベリンスキー(池内博之)に恋に落ちた瞬間がよくわかったよ。

1部で目立ってたのは池内さん。
暑苦しいほどの熱弁よかった。小難しいこと話しているのに、聞き取りやすくてベリンスキーの言いたいことが伝わっていたと思う。


15:35
【第二部 SHIPWRECK「難破」】
一部ではゲルツェン(阿部寛)よりもミハイルが目立ってたんだけど、ここからはゲルツェンですよ!
パリで暮らすゲルツェン一家はドイツ人の詩人ヘルヴェーク(松尾敏伸)と妻エマ(とよた真帆)と共同生活してるんだけどさ・・・。

耐えられない。
いや、ロマン主義もいいかもしれんよ。

教条主義に押しつけられてた個々人の感情を表現するのはいいことだと思うよ。
けどー・・・だからといって、流行に流されすぎのゲルツェンの妻ナタリー(水野美紀)が無理でした。
旦那とナタリーのことに気づいてるとよたさんの表情がすごいの!
こちら側にひしひしと伝わってくるのですよ、とよたさん、うまい。

オガーリョフの妻マリア(麻実れい)とナタリーが話合う場面があるんだけど、そこは水野さん、マリアのオーラに完全に飲まれてましたよ。
ナタリーのセリフはもうやけっぱちにしか聞こえない。
まぁ、この話し合いで感化された部分があるんだろうな・・・それからのナタリーは。

浮気(どっちも本気)がゲルツェンにばれた時の大ゲンカは結構迫力がありましたー。

第二部のポイントは耳の不自由な次男がしゃべるとこだなー。可愛かった♪

そしてその後で悲劇が起きるわけで・・・


冒頭と最後が同じシーン。明と暗を感じさせる。


19:15
【第三部 SALVAGE「漂着」】
三部の見所はミハイルです(笑)
せっかく阿部ゲルツェンが作り上げてきた世界なのに、ミハイルの登場で観客は笑いの渦です(笑)
最初出てきたとき、気づかなかったし。
ゲルツェンが名前を呼んでオガーリョフも観客も気づくくらい。


あとね、酔っぱらったオガーリョフが愛人の横で歌うシーンがあるんだけど、さすが石丸さん。
痺れました。
あぁ、ストレートプレイも面白いけど私はやっぱり歌のある舞台が好きだわ。


ロシア皇帝が死んだときに、ゲルツェンの幼い娘たちがテーブルの上で「ツァーリが死んだ」って歌いながら踊るのはシュールだと思ったよ。
時代というものは・・・


父親の遺産をついでお金持ちになったゲルツェンったら、毎日亡命貴族を呼ぶわ、子供たちには住み込み家庭教師をつけちゃうわ、思い立ったらすぐ実行で新聞を発行するし、いやはや。

ちなみにロンドンでもゲルツェンは四角関係です。
今度は自分ね。
オガーリョフの後妻ナターシャと絶賛浮気中。
オガーリョフも知ってる・・・奔放ですね、皆様。(それで愛人がいるんだけどさー)


「農奴解放」
しかし、今まで奴隷のように過ごしてきた人間が急に自由になっても難しいんだよね。血は流れる。
ゲルツェンやミハイルが目指していたユートピアにはたどり着くことができない。

次世代の革命家にゲルツェンが説得されるシーンがあるんだけど、微妙でした。
そんなうわっつらな言葉で説得出来るか?
もう少しセリフを自分のものにして欲しかったなぁ。

チェルヌイシェフスキー(長谷川博己)とバザーロフ(池内博之)は良かった!かなり。


前を見て進んでいくことが大事。
これなんだろうね。

なーんか派遣で働きながら好きなことしかやってない私ってさ、建設的じゃないし前向きじゃないような気がしちゃったわ。
すみません、勉強になりました。

幸福な時代に生まれちゃってごめんなさいと一瞬思いましたが、人生一回だけだし刹那的に生きてもいいじゃないかとか思い直しました。
ダメ人間はダメなままです(苦笑)


そういえばここまでハムの人のことを書いてないことに気づいた。

ツルゲーネフ(別所哲也)は幕が上がるたびに寝てたり、タチヤーナに恋されたり、えとえと・・・



カーテンコール3回で終了したのは22時20分頃でした。
カーテンコールは1部にしか出てない役者さんたちも皆さん衣装のまま出てきて挨拶。
スタンデイングオベーションで役者さんたちも嬉しそう。
っていうか、セリフがすごいもの。
よくあんなに覚えられるなぁってくらいの量。
全員が北島マヤモードにならないと。


初日ということもあり、堅いなーと思うところ、ちょっと間延びしてるところ、うーん・・・な方、ステージは開いているのに美術さんがまだセットになんてところもあったけど、全体的にはおもしろかったし興味深かったです。

哲学もたまにはいいもんだ。
人物相関図や背景を頭に入れておけば問題ないです。
私は、比較的客席が明るいときにはパンフレットの人物相関図を見てました。
自分はロシア関連はほとんど触れたことがないので、とっかかりにもよかったです。

それにしてもセリフの量が。

一緒に行った父上もご満悦。
自分ならここはあーしたいこーしたいと思いながら見てとても楽しかったらしい。
いい親孝行が出来た気分になりました。
いつも母上とばかり演劇を見に行くから、たまには父上ともいこうかなぁ。