アパートメントから眺める雨 | 人生をピンセットでつまむ

アパートメントから眺める雨

私は土砂降りの雨が好きだ。

土砂降りの風景を両手で頬杖をついて、

ぼけっと眺める。

グレーに染まった空と、庭と、町が、

数多の水滴に包まれる。

そのしっとりと湿った雰囲気が子供の頃から好きだった。

背後からは、

カチッ・カチッ・カチッ・カチッ・っと・・・

規則的な時計の針の音が聞こえる。

雨の音、針の音、呼吸の音。

三つの音が周囲を包む。

そんな雨を眺めながら、

さっき入れたコーヒーを一口飲む。

砂糖を入れすぎたせいか甘ったるい時が流れ、

土砂降りの雨は続いている。

私は窓ガラスにギュっと額を押し付け、

外のセンチメンタルな風景をじっと眺める。

冷たさが額を撫で、

数分も待たずガラスは温まり、

冷っこい感覚を奪って消えた。


土砂降りの雨が私は好きだ。

アパートの畳の湿った匂いが鼻腔に広がる。


雨、雨、雨、


そしてまた雨。