東洋における黄色を見てみると、
まず、中国において、黄色は皇帝の色として、
畏敬されていた。
明朝や清朝の皇帝の正装は、黄色い地に、色々
な文様がカラフルに刺繍されたものだった。
そして、皇帝以外は、黄色を身につけるのが禁じ
られた。
中国の皇帝の居城だった紫禁城のかわらの色が
黄色に彩られているのも、「天子の住む家」を
象徴している。
* 紫禁城
文明の源である河は、黄河。
「ここを見ずして山を見たというなかれ」と
言われる景勝は、黄山。
中国で大切なところの名前には、よく「黄」が
使われている。
これは、中国独自の祖神論がルーツとされる。
「祖神である天帝は、天の紫微垣にいる。
(紫微垣:今の小熊座にあたる星座)
地の天子は、大地にいる。」
という思想である。
天子の象徴色は、大地の色、すなわち、中国の
大地の黄色である。
また、中国の思想・哲学に大きな影響を与えて
いる陰陽五行説においても、黄色は中央に位置
する色である。
中国だけでなく、仏教、儒教、ヒンズー教の
国では、黄色が大変尊ばれている。
タイやチベット、ベトナムでは、僧侶が黄色い袈裟
をまとっている。
*タイのワット・マタハート
仏像に着せられた黄色い袈裟
インドのヒンズー教の寺院でも、大理石の建物に
橙と黄の彩色がなされている。
この風習は、日本にも伝えられ、
820年に即位した嵯峨天皇以来、
天皇の正装には、
黄櫨染御袍 (こうろぜんごぼう)
と呼ばれる、黄色の渋い色をした衣装をまとう
伝統がある。
この衣装は、重要な儀式に限って着用されるもの
で、普段は見られないが、最近では、平成二年の
即位式に、今上天皇がお召しになっていた。
上の写真は、それを再現したお内裏さまである。
このように、東洋においては、黄色は最上位の
色として君臨しているのである。
簡単な比較ではあったが、黄色という色一つをとっ
ても、西洋と東洋では、色彩感情にこれだけ違い
がある。
インターネットが発達し、簡単にさまざまな国の
人たちとつながりを持てるようになった。
そういう時代だからこそ、自分達の文化や歴史
を知り、またつながろうとする相手の国の文化や
歴史を知ることが、これまでよりもずっと大切に
なってくるのではないか。
黄色は、その思いを喚起させてくれる
ありがたい色である。