福井原発群は若狭湾にあるが、実は福井市からは結構離れている。風向きなどを考えると、滋賀県や京都府のほうが、直接の被害を受けやすいのである。京都府がそういう協定を結ぶなら、より近い滋賀県もまたそうするように要望するだろう。

もともと、原発の稼働に地元の意向は関係ないそうで、電力会社が動かすといって、原子力危険・隠蔽院がOKを出せばそれで動かしていいらしいのである。しかし、地元の意向も無視する訳ない行かないということで、こういう協定が結ばれている。とはいえ、佐藤栄佐久の『知事抹殺』を読めば、地元のこういう権限を、原子力村が如何に蔑ろにしているか、また、それに抵抗する者を如何に攻撃するかがよくわかる。こういう傲慢の背後には、原子力安全欺瞞言語がある。「安全なんだから文句言うな」というわけである。

しかし、福島原発事故でさすがにそうは言えなくなった。その上、今回の事故で、お膝元の県ばかりか周辺まで深刻な影響を受けることが明らかになった。正確に言うと、もともと明らかなのだが、明らかでないフリをしていたのだが、そうはいかないことが明らかになった。

京都府知事は、どちらかというと関西広域連合の中では推進派であって、橋元大阪府知事や嘉田滋賀県知事を牽制している。この協定もおそらくは、そういう牽制球の一種であって、「ちゃんと協定結んだのから、反対しなくて大丈夫」という理由付けにしたいのであろう。

しかし、おそらく、そうはいかないだろう。第一に、関西電力は、福井県との折衝だけでも大変で、その上、京都まで対応しないといけなくなることには、激しく抵抗するだろう。第二に、もし京都府が協定を結べば、滋賀県も同様の地位を当然に要求するだろうし、そうなると、岐阜県とかも関係することになる。全ての府県が合意しないと原発を再稼働できないとなると、事実上、対応は不可能となる。


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京都府、関電に安全協定求める 原発再稼動に関与望む
2011年6月22日 朝日新聞

 全国最多の原発15基(1基は解体中)を抱える福井県に隣接する京都府は、関西電力に対し、同社と福井県が結んでいるのと同じレベルの原子力安全協定を府側とも結ぶよう求める要望書を出した。稼働にあたって府側の意向を尊重させるねらいがあるとみられる。

 福井県内では、原発が立地する敦賀市や美浜町、おおい町、高浜町が県と連名で、各原発を運営する関西電力などの電力事業者と原子力安全協定を結んでいる。トラブル発生時に原発の停止を求める権限や、再稼働時に自治体の了解を得ることが定められている。

 京都府の要望書は今月17日付。山田啓二知事と府内の市町村長の連名で提出した。要望書は「立地自治体に準ずるような協定が締結できるよう取り計らうこと」を求めている。