※少し追記した。

原発について色々書いているうちに、猛烈な肩こりになってしまった。少なくとも現時点では、放射線による健康被害よりも、肩こりの方が私にとって深刻である。枝野長官でさえ8時間休んだらしいから、職務上、何の関係もない私が、こんなことで疲れても意味が無いので、ペースダウンしたい。

色々調べて回った結果をまとめておきたい。言うまでもないが、私はど素人で、情報は全てマスコミ経由であるから、下記が真実かどうか、知らない。知らないが、そういう情報を私自身の思想に基づいて分析し、まとめたものであり、その点においてのみ意味がある。これが後に明らかになることと、全くかけ離れていれば、私の思想が根本的に間違っていることが明らかになる、というメリットがあるので、書いておきたい。


【(1)最悪、事態はどこまでいくのか?】

我々の運がどこまでも悪く、東電も政府もまともなことを一切しない、という条件で考えてみると、以下のような悪夢のシナリオが考えられる。

・放射線レベルが上昇して、東電職員が全員撤退する。
・放ったらかしになった1~3号機がメルトダウンする。

ここから先が情報不足でよくわからないのだが、おおまかに言って三つの可能性がある。

Barry Brook)圧力容器の下の炉心キャッチャーが受け止めて、そこで止まる。

大前研一)再臨界になったら圧力容器が爆発し、格納容器も破損するが、そこで止まる。

今中哲二)溶けた炉心材料が格納容器の下にためている水と反応すると水蒸気爆発を引き起こす恐れがある。そうなるとチェルノブイリ事故に限りなく近づく。(今中氏は京大原子炉実験炉の助教。「熊取六人組」の一人)

1号機と3号機とは、格納容器全体に海水が入っている。大前研一は、この水が緩衝材になるので更に安全だと言っていたが、この海水は水蒸気爆発を起こさないのだろうか?

もしも不幸にも今中説が的中すれば、1~6号機の全てが吹き飛ぶことになろう。そうすると、1~3号機の炉心、更に、1~6号機に蓄積されている使用済み燃料数千本が、全て撒き散らされる。これは、チェルノブイリを遥かに上回る事故になる。アメリカが80キロ以上への退避を自国民に勧告し、ドイツやフランスが首都圏からも退避しているのは、この事態の可能性を考えているからだと思われる。

この可能性を排除できないのであれば、首都圏からでも、若い人で、退避できる人は退避した方が良い。既に述べたように、胎児、赤ちゃん、幼児は、できるだけ逃げたほうが良い。

逆に、60歳以上の人は、元気を出して、働いて社会の機能を保持し、若い人々を守ってほしい。何しろ、あなたがたの世代がこんなものを日本に設置して回ったので、こんなことになったのだから。


【(2)事態はどうなっているのか?】

ハッキリ言って、どうなっているのか誰にもわかっていない、というのが答である。放射線が凄くて近づけず、その上、計器がほとんど壊れているので、現場の作業員も、何が何だかわからずに作業している。確実なことは以下のとおりである。

(1)1~3号機で核燃料の、少なくとも半分以上が水で冷やされない状態が何日も続いている。
(2)1~6号機で、使用済燃料がむき出しになりつつあり、放射性物質が放出されている。こちらも、再臨界の可能性は否定できない。その場合には、炉内ではなく、外気中で起きる。
(3)炉心あるいは使用済み核燃料が熱くなり、水蒸気が酸化されて生じた水素により、爆発が続いている。

よくわからないのは、格納容器の下にあり、ドーナツ状の圧力抑制室という、水蒸気を水にして貯めておく場所が、壊れているかどうかである。2号機は壊れている、とされており、3号機もその可能性が指摘されている。一方で、もしそうだとすると、周辺の放射性水準が低すぎる、という原子力危険・隠蔽院の指摘も当たっているような気もする。しかし、全体として、壊れていると見たほうがよかろう。


【(3)なんとかなるのか?】

これもわからないが、

(1)自衛隊のヘリコプターと機動隊の放水車による注水が成功する→使用済み燃料が安定化。
(2)現在行われている電源回復工事が成功。
(3)緊急冷却装置などの設備が運良く動いてくれる。

という幸運が重なれば、少なくとも事態の悪化を止められる。


【(4)避難指示圏外の人は、逃げるべきか、逃げるべきでないか?】

「福島原発:逃げるべき人、逃げなくていい人」で既に述べたように、内部被曝が問題であるから、成長期の人や、今から子供をつくるつもりのある人は、できるだけ遠くに逃げたほうがよい。逃げるべき人ランキングは以下である。(9)以下は逃げないほうが良い。

(1)胎児
(2)赤ちゃん
(3)幼児
(4)児童
(5)若者
(6)これから子供を持つつもりの人
(7)子供をこれから持つつもりのない人
(8)もう子供なんか出来ない人
(9)老人
(10)後期高齢者
(11)平均余命を超えた人


【(5)どこへ逃げる?】

ベストは南半球である。これならチェルノブイリを越える事態でも当分は平気である。日本国内なら、九州くらいまで逃げないと、ウルトラ最悪を対岸の火事としてみることはできないだろう。しかし、西日本なら、何とかなるだろう。しかしパニックになって避難し、路上で寝るようなことになると、その方が健康被害が大きい。冷静に考えて自分で道を見つけるしかない。


【(6)どのくらいの放射線量なら安全か?】

安全な放射線量というものはない。どんなに微量でも、危険は危険である。ただ、微量であればその危険性が非常に低い、ということである。世の中に危険はつきものであるから、放射線から来る危険が、避難の危険を下回ると思うなら、逃げるべきではなく、上回ると思うなら、逃げねばならない。決めるのは、一人ひとりである。

それから、被害の規模は、

累積被曝量×被曝人数

で見積もらねばならない。多くの人が少量の放射性物質に晒されることは、少数の人が大量の放射性物質に晒されるのと、少なくとも同等に危険である。ところが、政府もマスコミも、この事実に目を塞いで、

「健康に影響はない水準です」

を繰り返しているが、これは、

「健康に影響があっても、原発のせいだとはバレない水準です」

という意味に過ぎない。(詳細はこちら


【(7)なぜこんなことになったのか? どうしたらよいのか?】

原子力欺瞞用語を使うからこんなことになったのである。

・危険を安全という。
・不安を安心という。
・隠蔽を保安という。
・事故を事象という。
・「長期的には悪影響がある」を「ただちに悪影響はない」という。
・無責任を責任という。

孔子は以下のように述べている。

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『論語』子路13-3
子路曰。衛君待子而爲政。子將奚先。
子曰。必也正名乎。
子路曰。有是哉。子之迂也。

子路は言った。「衛の君主が先生に政治をさせたとしましょう。先生はまず何をなさいますか。」
先生は言った。「必ずや、名を正す。」
子路は言った。「これだから、先生は迂遠だ。」
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今の事態においても、まず行わねばならないことは、迂遠に見えるかもしれないが、名を正すこと、すなわち事実に即した言葉を常に使うことである。その兆しが多少はみえていることが、光明である。

1995年の「もんじゅ」の大事故についての平岡憲夫氏の以下の言葉が全てを明らかにしている。今回の事故でもあれだけの「爆発」を「爆発的事象」と言っていた。

=============平岡憲夫「原発がどんなものか知ってほしい」より========

 しかし、こんな重大事故でも、国は「事故」と言いません。美浜原発の大事故の時と同じように「事象があった」と言っていました。私は事故の後、直ぐに福井県の議会から呼ばれて行きました。あそこには十五基も原発がありますが、誘致したのは自民党の議員さんなんですね。だから、私はそういう人に何時も、「事故が起きたらあなた方のせいだよ、反対していた人には責任はないよ」と言ってきました。この度、その議員さんたちに呼ばれたのです。「今回は腹を据えて動燃とケンカする、どうしたらよいか教えてほしい」と相談を受けたのです。

 それで、私がまず最初に言ったことは、「これは事故なんです、事故。事象というような言葉に誤魔化されちゃあだめだよ」と言いました。県議会で動燃が「今回の事象は……」と説明を始めたら、「事故だろ! 事故!」と議員が叫んでいたのが、テレビで写っていましたが、あれも、黙っていたら、軽い「事象」ということにされていたんです。地元の人たちだけではなく、私たちも、向こうの言う「事象」というような軽い言葉に誤魔化されてはいけないんです。

 普通の人にとって、「事故」というのと「事象」というのとでは、とらえ方がまったく違います。この国が事故を事象などと言い換えるような姑息なことをしているので、日本人には原発の事故の危機感がほとんどないのです。
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