昨年の9月以降、採算が取れる実績を上げながら、閉院したり、分娩の取り扱いを中止したりする病院や産科診療所が相次いでいることが、産科医らでつくる「産科中小施設研究会」の調査で明らかになった。「黒字」になるはずの施設が閉院や分娩中止に追い込まれている理由について、同研究会では、昨年に導入された出産育児一時金の直接支払制度による資金不足と指摘し、一刻も早い制度の撤廃を求めている。

 同研究会の調査によると、2009年9月から10年2月までに、閉院や分娩の取り扱いの中止を決定した病院や産科診療所は、明らかになっているだけでも全国で25施設。そのうち10施設は採算ラインとされる1か月で20回以上の分娩を扱っていたにもかかわらず、閉院や分娩中止に追い込まれていた。中には、1か月で67件もの分娩を手掛けていたのに閉院した診療所もあったという。同研究会では「一時金の制度が変更され、医療機関への入金が出産の1-2か月後になってしまうため、各施設は資金繰りに苦しみ、閉院や分娩中止に追い込まれているのではないか」(同研究会の池下久弥医師)と分析している。

 また、病院や産科診療所の一時的な資金不足を解消するため、経営安定化資金を融資する独立行政法人「福祉医療機構」には、昨年10月1日から2月26日までに304件の融資申し込みや相談があったが、融資が決定したのは150件。特に診療所の申し込みや相談は8割超(248件)を占めていたが、融資が決定したのは117件に過ぎず、一部の関係者からは「貸し渋りに遭っている」との声も上がっている。

 実際、融資を申し込むため同機構を訪れた同研究会のメンバーの中には、担当者から「(新制度によって経営が圧迫されるというなら)患者さんにこの制度を利用しないよう説得しなさい」と“指導”されたり、取引のある業者の決算書の提出など、事実上、実現不可能な融資条件を提示されたりする医師もいたという。

 池下医師は「今回、明らかになった数字は、氷山の一角に過ぎない。もっと多くの病院や産科診療所が、新制度で苦しんでいるはずで、一刻も早く直接支払制度を撤廃してほしい」と話している。

 出産育児一時金の直接支払制度:出産育児一時金が、出産する人ではなく産科医療機関に保険者から直接支払われる制度。昨年10月から導入された。公的医療保険から医療機関への支払いに1-2か月かかる点に対して、産科医療機関からの反発が強く、完全実施は3月末まで猶予されている。


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