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(62) 術中体温管理(加温装置いろいろ)

2012-02-21 15:33:22 Theme: 勉強
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全身麻酔下での手術では、
中枢から末梢に熱が再分配され、体温が低下する。

全身麻酔により熱産生が低下するだけでなく、
対流、伝導、蒸発、放射など様々な機序により熱が奪われ、
さらに体温が低下し、あるところで定常状態に達する。

術中低体温は、創感染、凝固障害、筋弛緩遷延のリスクになり、術後回復遅延につながる。

従って、
手術中は36度以上を保つように管理することが推奨される。

対流、伝導、蒸発、放射など熱が奪われる機序をブロックすることは大切だが、
それだけでは低体温は改善しない。
積極的に加温していく必要がある。

Forced-air warming
(たとえば、Bair Hugger、くまさんでおなじみベアハガー。)

Carbon-fiber resistive-heating system
(たとえば、SmartCare、オレンジ色の重い装置)

Circulating-water garment
(たとえば、Rapr・Round Body Wraps 自施設にないから実物見たこと無いけど。)

など加温装置も色々ある。
果たしてどれが一番効果的なのだろうか。

Core temperatures during major abdominal surgery in patients warmed with new circulating-water garment, forced-air warming, or carbon-fiber resistive-heating system.
J Anesth. 2011 Dec 22.


先ほどの
1. Forced-air warming
2. Carbon-fiber resistive-heating system
3. Circulating-water garment
  (これだけさらに +circulating-water mattress)
での深部体温の変化を比較している。

結果は、
Circulating-water garment(+circulating-water mattress)が一番術中の深部体温保持効果が高かった。

ただ、今回の結果は、
Circulating-water garment(+circulating-water mattress)が一番効果があったものの、
単に(+circulating-water mattress)があることによって他のと差がついただけだろうと著者らは考察していた。

circulating-water mattressをプラスしたため、加温装置の体表カバー率に差が出てしまっている。それが原因だと。

Forced-air warming群と、
Carbon-fiber resistive-heating system群の
体表カバー率が15~20%だったのに対して、
Circulating-water garment(+circulating-water mattress)群では30%だった。

さらに、
仰臥位だったら自体重により背部の皮膚の血流が落ちるため、
circulating-water mattressは熱伝達効率が悪い。
しかも、熱傷のリスクにもなる、
と指摘している。

そのため、本文の最後のまとめでは、
今回の結果で一番良かったCirculating-water garment(+circulating-water mattress)を推奨するのではなく、
一般的にはForced-air warming、すなわちBair Huggerが、安価で安全でもっとも良いんではないでしょうか、
circulating-water mattressを使用するにしても注意が必要ですよ!
とまとめていた。

研究デザインは重要ですね。
結果にへんな解釈が必要になり、
結局のところ何が言えるのかわからなくなってしまいます。


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(本) おじさん図鑑

2012-02-14 15:45:10 Theme:
最近いろいろなところで話題になっているおじさん図鑑!?
知ってますか?

本屋でやっと見つけました。



見てみると、
「こんなおじさん、いるいる。」
と妙に納得してしまいます。
著者のすごい観察眼には恐れ入ります。


「自分はまだここで描かれているおじさんほどおじさんではないよなあ。」
と自分に言い聞かせているような気もしながら・・・。

そう思っているのは自分だけでしょうか!?
端から見たら大して違いが無いかもしれない。
ああ、恐ろしい。

話題のネタになること請け合いです。

おじさん必見、
いや、おじさんだけでなく、
将来のおじさん候補、
はたまた女性も楽しめるかも。

単行本サイズでおすすめです。

反面教師にもなるかも。

(61) 麻酔中の低体温対策(アミノ酸輸液)

2012-02-14 10:57:01 Theme: 勉強
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全身麻酔を導入すると、
3相性に体温が低下することが知られている。

術中の低体温は、
凝固障害、心合併症、創感染症の発生リスクとなったり、
輸血必要性が上昇したりする。
術後の回復が遅延するため、
結果として在院日数の増加につながるため、
そのため積極的に加温に努めて、
低体温を防止する必要性がある。

加温する方法の1つにアミノ酸輸液の投与というのがある。

その機序は必ずしも明確ではないものの、
代謝に影響を与え、熱産生効果を高める。
投与開始を契機に徐々に体温が復温していく様子は、
トレンド画面をみると良くわかる。

ただ、
仮に麻酔導入時から投与を開始しても、
熱の再分配を原因として急速に体温が低下する、
いわゆる第1相を防止するほどの熱産生効果はないようだ。

アミノ酸輸液はいつから投与すれのが良いのだろうか?


奈良県立医大のDrが、
低体温の第3相、いわゆるプラトーフェイズになってから、
アミノ酸輸液を投与開始した時の結果を報告していた。

Amino acid infusions started after development of intraoperative core hypothermia do not affect rewarming but reduce the incidence of postoperative shivering during major abdominal surgery: a randomized trial.

J Anesth. 2011 Dec;25(6):850-4. Epub 2011 Sep 17.


投与群:アミノ酸輸液を投与した。11例
非投与群:投与していない 10例

投与群は深部体温(鼓膜温)が35.5度まで低下したら、
アミパレン200mlを1時間で投与した。

両群ともよくある体温管理に加え、
Bair Hugger(上半身用 38度)を使用していた。

体温:
深部温(鼓膜温)
温度勾配(前腕皮膚温ー指先皮膚温)

15分間隔で麻酔導入時から4時間目までと、
さらに抜管時に測定した。

結果

深部温:
麻酔導入から4時間目、抜管時とも両群間で差が無かった。

温度勾配:
麻酔導入時から4時間目までは両群間に差はなかったが、
抜管時は投与群で少なかった。

術後シバリング:
投与群では頻度は少なく、程度は軽かった。

低体温になってからアミノ酸輸液を投与しても、
深部体温の再加温効果は非投与群と差が無く、
アミノ酸輸液による深部体温の再加温効果があるとは言えない、
という結果だった。

ただ、
アミノ酸輸液投与開始基準である35.5度になったのが導入開始から約75分後のことなので、体温測定していた時間が短かったことも効果を確認できなかった理由の可能性があり、術後まで長時間見てれば差が出たのではないかとも考察している。

また、
温度勾配は体温調節性の指標とし、
温度勾配が少ない=血管収縮が少ないと考えている。
アミノ酸輸液を投与することにより、
体温調節性の血管収縮は軽減し、
その結果、術後シバリングの重要な予測因子である末梢温を上昇させることが出来たことが、シバリングが減少したの理由だと考察している。

結果をそのまま読んで、
今日からの臨床に活かすとするなら次のような感じか。

低体温になってからアミノ酸輸液を投与しても、
深部体温の復温に与える影響は限定的。
だが、様々な合併症のリスクになりうるシバリングの発生を減少させることが出来るので、
可能ならどのタイミングでも良いから
アミノ酸輸液(アミパレン200ml/h 1h)を投与しよう。


個人的な意見としては、
Bair Huggerによる加温効果が高いことも、
深部体温に差が出なかった理由なのではないかと思う。
Bair Huggerがなければ、
非投与群はずっと低体温のままだった可能性があり、
両群間でしっかりした差が出たのではないだろうか。


アミノ酸輸液も可能な症例には投与する。

Bair Huggerもしっかり使用する。


術中の低体温、術後のシバリングを予防するために、
両者をほぼルーチンで使用したいと思うがどうでしょう。

Bair Huggerを使用しても、
現状では医療施設の持ち出しだったような・・・。
願わくばきちんと特定医療保険材料として算定していただきたいなあと思います。(これは確認未)

ペット医療でも使用されてるみたいですね。
http://takahashipetclinic.blog62.fc2.com/blog-entry-388.html


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(60) 術前の飲水制限 日本人の場合は・・・

2012-02-07 13:51:37 Theme: 勉強
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ASAのガイドラインで、
術前2時間まで水分の摂取が許容されたのが1999年のこと。
ヨーロッパでも同様のガイドラインが制定されている。

しかし、
日本では2003年になっても、
まだほとんどの病院で術前一晩の絶飲は当たり前だった。

ERASの概念が広く知られるようになり、
術前の絶食絶飲時間も見直されてきたのは最近の事である。

日本人での安全性、有効性の報告も多数でてきている。

さらに駄目押しの一手!
として、
大学病院レベルの他施設無作為比較試験が報告されていた。

Safety and efficacy of oral rehydration therapy until 2 h before surgery: a multicenter randomized controlled trial.
J Anesth. 2011 Nov 1.



方法:
2010年1月~2011年3月までに行った、
20~80歳の予定手術を対象としている。

通過障害などの経口補水療法に適さなさそうな状態は除外されている。

一次エンドポイント:麻酔導入直後の胃液量と pH 。
二次エンドポイント:嘔吐誤嚥などの合併症の有無、BMIと胃液量の関係、傾向補水の効果(検査データ、患者満足度など)

補水群:OS-1 1000mlを摂取。
(手術前日21:00時から術日朝までに500ml、
 術当日朝術前2時間までに500ml。)
絶飲群:術前日21:00に絶飲。


結果:
麻酔導入直後

胃液量
補水群 15.1ml、
絶飲群 17.5ml(P=0.30)
ORS群と絶飲絶食群間の平均差はわずか2.5mlのみ。

胃液pH
補水群 2.1
絶飲群 2.2(P=0.59)

FENa
補水群 0.94%
絶飲群 0.64%(P<0.001)

FEUN
補水群 37.7%
絶飲群 27.2%(P<0.001)

尿量
術前、手術開始1時間後まで、ともにORS群の方が多かった。

患者満足度
補水群の方が口渇感、空腹感はなかった。

合併症
両群ともになし。

他施設無作為比較試験としてエビデンスレベルを挙げても、
やっぱり術前2時間までの経口補水療法は十分に安全に施行できる事が示された。

術前2時間まで経口補水しても、
心配していた胃液残存による導入時の嘔吐リスクの上昇は無いと断言しても良いだろう。
残存胃液200mlというのが嘔吐のリスクの目安のようだが、
それを超えた症例は1例も無いし、
実際合併症も無かった。

FENa、FEUN、BUN/Creの結果を見ると、術前日夜からの絶飲は体内水分量を減少させている事を示している。
そのため、患者は口渇、空腹感も感じてしまい、患者満足度も低下した。

まとめると、
術前の長期間の絶飲によってもたらされるメリットはない。
それどころかデメリットがある。
一方、術2時間前までの経口補水はメリットも色々あるが、
なによりデメリットが無い事が良い。

興味深い事は、
高齢になるほど、胃液量は減少するという逆相関関係があった。
高齢者だからといって絶飲時間の安全域を広くとる必要はなさそうだ。
(今回の報告では80歳以上は除外されている。)

またBMIと胃液量には相関関係はなく、
肥満だからといってこれまた絶飲時間の安全域を広くとる必要もなさそうである。
(今回の報告ではBMI35以上は除外されている。)

Gastric emptying of water in obese pregnant women at term.
Anesth Analg. 2007 Sep;105(3):751-5.


妊婦も大丈夫そうである。

まとめると、
高齢者、肥満、妊婦、いずれも経口補水療法の対象としても問題なさそうである。

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(59) 麻酔管理における喉頭痙攣

2012-01-31 10:33:07 Theme: 勉強
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麻酔中、
特に小児ではふとした刺激により容易に喉頭痙攣が発症する。

正門が閉鎖し、換気不能となり、
次第にSpO2の音が低音になり・・・。

ひやっとした事は麻酔科医なら少なくとも一度はあると思う。

発症後の対応はもちろん重要だが、
リスクのある患者を認識し、予防する事はより大切である。

たまにこういうのも復習する必要がある。
個人的には・・・。

Case Scenario: Perianesthetic Management of Laryngospasm in Children.Anesthesiology. 2012 Feb;116(2):458-471.


患者要因のリスク

1. 年齢:
報告により差はあるが、若年齢であるほど発症リスクが高い。
就学前では2%前後の報告が多い。
発症例の50~68%は5歳以下という報告もある。
1歳年齢が上がる毎に、リスクは8~11%減少する。

2. 上気道感染症:
上気道感染症があると発症リスクは2~5倍に上昇する。
治癒後6~8週間は気道過敏性が亢進していると言われるが、
喉頭痙攣の発症リスク上昇は2週間以内までらしい。

3. 受動喫煙:
家族内に喫煙者がいると、発症率は10倍程度上昇する。

手術要因のリスク

1. 喉咽頭の手術:
扁摘術の抜管後は発症率が20~26.5%にも達するという報告もある。

2. 緊急手術:
緊急手術では喉頭痙攣を含む気道合併症が増加する。
(14→17%、相対リスク1.2)


麻酔要因のリスク

1. 浅麻酔:刺激が加わると誘発される。

2. 上喉頭神経領域の刺激:
分泌物、血液、カテーテルの接触、喉頭鏡の接触

3. 麻酔導入、抜管:抜管時が最も重要!


予防

気道症状が現在ある、あるいは治癒後2週間未満の場合、
緊急性の無い手術では延期を考慮。

分泌物を減らすために抗コリン製剤の術前投与は効果が不明確。

浅麻酔の時に刺激を、特に上喉頭神経領域に刺激を与えない。

静脈ラインキープも浅麻酔時は避ける。
(眼球が正中に固定されてから。)

気管挿管はフェイスマスクよりも11倍リスクが上昇するので、
必要なければフェイスマスクで管理。

麻酔管理は慣れた麻酔科医がよい。

挿管するなら筋弛緩薬を使用する。

キシロカイン散布は効果的ではない可能性あり。

デスフルランの方がセボフルランやイソフルランより発症リスクが高い。

抜管は完全覚醒後がいいか、あるいは深麻酔下が良いか議論が残る。

LMAは深麻酔下、気管チューブは覚醒下抜管が好まれる傾向にある。

そしてすべてgentle maneuverを心がける。


不幸にも喉頭痙攣が発症すると、
完全喉頭痙攣の場合、換気不能になり、低酸素血症になる。
多くの場合、低酸素血症になると、声帯が弛緩し、痙攣が解除され、陽圧換気が可能になることが多い。
そうはいっても低酸素血症→徐脈→陰圧性肺水腫、心停止まで至る場合あり、低酸素血症になるまで待つ事は推奨されない。

ちなみに、
陰圧性肺水腫はinfantには少ない。
コンプライアンスが高い事が影響していると思われる。
発症例の80%は喉頭痙攣直後に発症するが、4-6時間後に発症する事もあり、経過観察は必要である。
その後に発症する事は無い。

致命的な事もあり得るので、
喉頭痙攣の発症後は迅速な対応が求められる。

一般的には、
1. 刺激物質除去
2. オトガイ挙上
3. 下顎前方突出
4. CPAP
5. 100%酸素による陽圧換気
が第一段階となる。

ただ、100%酸素による陽圧換気の弊害として、
胃内に空気を送り込みやすく、胃の膨満→逆流に注意する。
陽圧換気した86.5%で胃の膨満が見られたとする報告もある。

gentle chest compressionというのもいいらしい。
喉頭痙攣解除の成功率は73.9%(CPAP+陽圧換気では38.4%)と良好である。
しかも胃の膨満が見られた患者はいなかった。

Gentle chest compression relieves extubation laryngospasm in children.
J Anesth. 2010 Dec;24(6):854-7. Epub 2010 Oct 26.



だめならすぐに薬物治療を考慮。
これが第二段階。

1. プロポフォール:
喉頭が弛緩する。0.8mg/kgで改善率76.9%。抜管前の0.5mg/kgあるいは0.25mg/kgの予防的投与も良いかもしれない。3歳以下ではデータに乏しいし、徐脈+の完全閉塞には効果が疑問視されている。

2. 筋弛緩薬:
サクシニルコリンがgold standardと。ivなら0.5mg/kg、imなら1.5~4mg/kg(効果発現まで時間かかる。)。徐脈では使いにくい。前もってアトロピン0.02mg/kgの投与は必須。
ロクロニウムも良い。ED95の2-3倍(0.9~1.2mg/kg)を使用する。リバースできるのも強み。

3. リドカイン:1.5mg/kgを使用。効果はcontroversial

予防アルゴリズム

治療アルゴリズム

安全第一!
事故ゼロ運動継続中。

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(58) 非侵襲的ヘモグロビン測定(SpHb)は役に立つのか?

2012-01-24 15:59:09 Theme: 勉強
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時代は変わるもので、
今では採血しなくてもヘモグロビンが測定できるようになった。

Radical-7™

Pronto-7

これは画期的な事だと思う。
なにせ非侵襲的に情報が得られるのだから。

将来的には採血する事無く、
あらゆる検査結果が得られるようになるのだろうか。

あとはこれら新しい技術を、
我々がどのように実際の医療に組み込んでいくかが重要なテーマである。

輸血のトリガーとして、
非常に不本意ではあるものの、
ヘモグロビン濃度の絶対値は未だに重要なウェイトを占めている。

術中出血が多くなれば、
Aラインから適宜採血して確認することになる。
Aライン入れるような手術では、
簡単にヘモグロビン実測値が測定できるので、
非侵襲的ヘモグロビン測定の有用性は見いだしにくい。

ただ産科手術などのように、
大量出血する可能性もあるけれど、
普通はAラインも入れないため、
簡単に採血できず、
出血量で想像するかといっても、
羊水などがあるため出血見積量がアバウトになりがちな手術では有用かもしれない。

しかも、術後も継続してモニターする事により、
オカルトな術後出血に気づくタイミングも、
臨床的に症状が顕在化するより早くなる可能性が高い。

Non-invasive haemoglobin measurement in patients undergoing elective Caesarean section.
Br J Anaesth. 2012 Feb;108(2):271-7. Epub 2011 Nov 23.


予定された帝王切開術の時に、
非侵襲的にヘモグロビン濃度測定と、
検査室で測定したヘモグロビン濃度にどのくらいあるか?
というstudyがあった。

現状では両者のバイアスは、
手術直後は0.14g/dlと概ね一致していたが、
術後24時間後では1.36g/dlと差が生じる。
許容限界は、
手術直後は-2.35~2.56g/dlで、
術後24時間後は-0.55~3.27g/dlとなっている。

全体の67%は、両者の差が1.5g/dl未満で収まるが、
18%では2.0g/dl以上の差が生じる。

で結論としては、
非侵襲的ヘモグロビン測定は正確性としては今一歩で、
検査室での測定の代替にはならず、改善が必要!となっていた。

もちろんこれはアウトカムを、
非侵襲的ヘモグロビン測定とヘモグロビン濃度実測値とでは差が無い、という事においているために、
辛口の結論に行き着いていると思われる。

今まで、臨床的に症状が顕在化するまでわからなかった、
周産期の出血からくる貧血をより早期にキャッチできる可能性があり、その恩恵を受ける患者はある一定の割合で必ずいるものと思われる。

ヘモグロビン濃度の絶対値の正確性は現状では今一歩であっても、トレンドを追う事により間違いなく役に立つ。
ただ、NNT(number needed to treat)は大きいと思うけど・・・。

問題があるとすればコストだ。
センサーは再使用を前提に作られてなく、
1回使用が原則だと言う。
それでいて1つ1万円!
つまり1症例あたり約1万円も経費がかかる。

日本の出産件数を100万件として、
全症例に使ったとしたら!
なんと、100億円も経費がかかる事になる。
病院の持ち出しになるだろうから、
不景気の日本においては、
この非侵襲的ヘモグロビン濃度測定を活用できるところは限られてしまうだろう。

残念。

他の領域にも活用したら増える必要経費は恐ろしい額になる。

整形外科でもstudyがある。

Continuous noninvasive hemoglobin monitoring during complex spine surgery.
Anesth Analg. 2011 Dec;113(6):1396-402. Epub 2011 Sep 29


おそらくこれからもしばらく、
類似のstudyがしばらく散見されることだろう。

骨折の手術では術後もだらだら出血が続くようなので、
活用するには良い適応領域かもしれない。

参考までに、
測定原理上、
組織低灌流になっているような状態、
ショックや、低体温などでは、
あまり当てにならないようだ。

こういう症例ではAラインあるのが普通なのでいらないか。

The accuracy of noninvasive hemoglobin measurement by multiwavelength pulse oximetry after cardiac surgery.
Anesth Analg. 2011 Nov;113(5):1052-7. Epub 2011 Sep 14.



以下引用

SpHb 測定の分析基質として 拍動血を必要とするため、拍動成分が十分ではない ショック状態や心停止のような低灌流状態において は、表示が不可能になる場合がある。SpHbは、我々 の経験則ではPI値が0.7を切ると、tHbとの乖離が大 きくなるように思われる。

とある。

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(57) 心拍出量は多ければいい!のか?

2012-01-17 16:46:18 Theme: 勉強
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周術期のGDT(目標志向型治療)は、
心拍出量を積極的に介入する事により、
周術期に変動する酸素需要に対応し、
需給バランスを適正に保つ事を目的とする。
結果として、
ハイリスク患者を中心にGDTを活用する事による周術期予後の改善が多く報告されている。

Goal-directed haemodynamic therapy and gastrointestinal complications in major surgery: a metaanalysis of randomised controlled trials.
Br J Anaesth 2009;103:637-46.


Clinical review: goal-directed therapy in high risk surgical patients. Crit Care 2009;13:231.

ただし、
必ずしも決まったプロトコールがあるわけではないため、
全面的に受け入れられているわけではなく、賛否両論ではある。

Randomized controlled trial of intraoperative goal-directed fluid therapy in aerobically fit and unfit patients having major colorectal surgery
Br. J. Anaesth. (2012) 108(1): 53-62


ERAS型管理を行っている待機的大腸直腸手術に対して、
従来型の輸液管理を行った群と、
GDTで輸液管理を行った群の2群に分け、
術後在院日数を比較した。


今回のGDTプロトコール:

200mlのコロイド輸液を5分以上で輸液する。
経食道ドップラーを用いて心拍出量を測定し、
1回拍出量が10%以上増加したら再度コロイド輸液投与し再検。
10%以上増加しなければ、経過観察。
以後、15分毎に再検し、
1回拍出量が10%以上減少するまで継続。
10%以上減少していれば200mlのコロイド輸液を投与し、
1回拍出量の増加を確認し、この繰り返し。


両群とも、
血管作動薬は麻酔科医の判断により適宜投与する事が出来、
GDTプロトコールには組み込まれていない。


結果:

従来群90例
GDT群89例

術後退院可能日(従来群 vs GDT群:4.9日 vs 6.8日)
術後在院日数(従来群 vs GDT群:6.7日 vs 8.8日)

とGDT群の方がむしろ2日ぐらい延長していた!

GDT群は
出血量が250nl多かった。
プロトコールにより追加されたコロイド輸液は1360mlだった。


今回のGDTプロトコールでは、
輸液にだけによる介入で、
かつ心拍出量の最適化というよりは最大化を目標としている。

すなわち、
心拍出量の最大化はかならずしも周術期予後の改善につながらない
といえる。

酸素需要以上に、供給量を上げても意味が無いどころか、
むしろ有害だと言う事だ。

筆者らによると、
従来群の1回拍出量は、
皮切時80.9mlだったところ、
閉創時には95.4mlと上昇しており、
従来群自体の成績もすこぶるいいといっている。
これはERAS型管理が功を奏した成果だと考えており、
さらにGDT管理を加えると、過剰輸液につながり、
それが予後に影響しているのではないかとも考察している。

今回のGDTはプロトコール自体が特殊であるため、
必ずしもGDT管理を加える事が周術期予後に悪影響を及ぼす!
という結果につながるわけではない。

しかし、
心拍出量最大化は必ずしも周術期予後の改善につながらない!
という結果は十分に認識する必要がある。

では心拍出量はどのぐらいあれば良いのか!?
どう個別化していくのか?

ここらへんが、GDT管理の今後の課題だと思います。

Cardiopulmonary Exercise Testing:心肺運動負荷試験
リンク1
リンク2

anaerobic threshold:AT:嫌気性代謝閾値

それにしても輸液量17ml/kg/hって多くないですかね?

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(本) 軍配者シリーズ三部作

2012-01-15 15:40:06 Theme:

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軍配者シリーズ3部作。


歴史小説初心者の自分にもすんなり読めるライトな感じ。

マニアの人にとってはいろいろ不十分な点もあるのでしょうが、

とても面白く読むことが出来ました。


三者三様の人生。

尊敬でき、信頼できる上司と、

離れていても切磋琢磨し、意識しあえる友の存在。

憧れますな。


家族ある者にとっては、

最後は涙なしでは読めませんでした。

(個人的には。)


年齢を重ねて、涙腺が緩くなってきました。


上から順番にどうでしょうか。


早雲の軍配者
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信玄の軍配者
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謙信の軍配者
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ひさしぶりに信長の野望がやりたくなりました。




信長の野望って今じゃめちゃくちゃ種類あるんですね。

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(56) 硬膜外麻酔は大腸癌の術後再発率を減少させるか?

2012-01-10 17:08:03 Theme: 勉強
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大腸癌などの固形癌は、白血病などの悪性腫瘍と違い、
手術的に切除可能な反面、
手術自身が転移のリスクにもなる。


手術操作自身により播種させる可能性だけでなく、
免疫能を低下させ、既に存在する微小転移の成長を促進させる可能性も指摘されている。

また手術のために必要な麻酔薬による影響もあるようだ。

吸入麻酔やオピオイドにより、
NK細胞活性が低下し、
これまた腫瘍進展を招く可能性がある。

近年、腫瘍進展に対して悪影響を及ぼす可能性のある全身麻酔に、
局所麻酔を加えると術後の癌の再発率低減に有効とする報告が相次いでる。

ブロック自身が外科的侵襲を和らげたり、
吸入麻酔薬やオピオイドの必要量を減らす事が影響しているかもしれない。

Can anesthetic technique for primary breast cancer surgery affect recurrence or metastasis?
Anesthesiology 2006; 105:660–4


Anesthetic technique for radical prostatectomy surgery affects cancer recurrence: A retrospective analysis. Anesthesiology 2008; 109:180–7

ERASの中心でもある大腸癌ではどうだろうか!?

バージニア大学で2000年から2008年に行われた大腸直腸癌で調査された。

Association between epidural analgesia and cancer recurrence after colorectal cancer surgery.
Anesthesiology. 2010 Jul;113(1):27-34.


はたして、
全身麻酔に硬膜外麻酔を併用する事により、
全身麻酔単独よりも少ない再発率を示すのだろうか?

経過観察期間は中央値で1.8年と短い。

再発があった症例は、
硬膜外麻酔あり:13%
硬膜外麻酔なし:16%

硬膜外麻酔なしの方が再発率はわずかに高いのだが、
硬膜外麻酔の有無と、
術後の癌再発率の間に相関関係は見いだせなかった。

再発率に関係しそうなところは、
腫瘍のステージの進行具合と、化学療法の有無といったところ。

それから年齢による要素も見られたようで、
64歳以上では硬膜外麻酔があると再発率が少なかったらしい。

色々理由は考えているようだが、
はたしてどうなんだろうか。

まとめると、
今回の大腸直腸がんに関するstudyでは、
「全身麻酔に硬膜外麻酔を併用すると、全身麻酔単独よりも、術後の癌の再発率が減る」という仮説を証明する事は出来なかった。

ただ、
麻酔管理が短期予後だけでなく、長期予後にも影響を及ぼす可能性があるという事は麻酔科医にとって非常に興味深い。
今後も、より良い結果を求めてこれからも色々探求していく事は必要だ。

ま、硬膜外麻酔に関しては、
長期予後改善などと背伸びしなくても、
周術期の質を改善するのでどんどんやっていくのがよろしいかと。

(37) 硬膜外麻酔の効果再考

(23‐1) 硬膜外麻酔はがんの再発に影響を与えるか? ~はじめに~

(23‐2) 硬膜外麻酔はがんの再発に影響を与えるか? ~本編~

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(55) SVV(1回拍出量変動)は役に立つのか?

2012-01-09 15:29:01 Theme: 勉強
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周術期において、輸液管理は重要な治療介入の1つである。

いつ、何を、どれだけ、輸液するか!?

わかっているようで、実はほとんどわかっていない。

輸液すればするほど良いかというと、
過剰輸液は浮腫につながり、
末梢循環不全、そして酸素供給障害の原因になり、
術後合併症が発生するかもしれない。

適正輸液とはどのぐらいか?

それを達成するためには何を指標にすれば良いのか?

従来、
CVP
PAWP
RVEDV
LVEDV
といった静的指標(sratic parameters)をたよりに輸液を行っていた。

しかし、信頼性に乏しく、役に立つとは言いがたかった。

その代わりに注目されているのが、
動的指標(dynamic parametors)の1つであるSVV(1回拍出量変動)である。

測定できる機器は主に2種類ある。

1. PiCCO plus

冷却水を用いた熱希釈法で心拍出量(cardiac output: CO)を測定し、
これをもとに動脈圧波形解析法(Pulse contour法)から心拍ごとの拍出量を測定できる機能を有し、
その変化率からSVVを測定している。

正確だが、キャリブレーションが必要だし、
必要なカテーテルも多く、ややハードルが高い。

2. FloTrac

COの測定は直接動脈圧の波形とこれまでに蓄積された血管コンプラ イアンスの標準値を基に心拍出量を算出し、その変化率からSVVを測定している。
動脈圧ラインをkeepするだけで簡便に測定できるが、数値の信頼性に疑問が残るという意見もある。

SVVは、
輸液反応性の指標、
すなわち輸液する事で心拍出量が増加するか?
という指標として活用されている。

SVVは、輸液反応性の指標として本当に有用なのか?


Accuracy of stroke volume variation in predicting fluid responsiveness: a systematic review and meta-analysis.
J Anesth. 2011 Dec;25(6):904-16. Epub 2011 Sep 4.



SVVと輸液反応性のcorrlation coefficientsは0.718で、一応、強い相関があるといえる。
診断的オッズ比は18.4で、感度0.81、特異度0.80。
AUC(曲線下面積)は0.84。

ということで、
輸液反応性の指標としてSVVはおおむね診断的価値があるといえる。

ただし、
注意点としては自発呼吸下の患者では指標にならない。(Pressure supportでのstudyではAUC=0.52)
陽圧換気していても1回換気量が少ないと指標にならない。
診断的価値があるのは8ml/kg以上となる。
他には、不整脈、重度の弁疾患、心内シャント、末梢血管障害、低EFでも診断的価値がない。

ということで、
結論としては、
SVVは輸液反応性の指標として診断的価値がある。
完全ではないものの、
簡便に指標が得られるのは有用である。

残る問題は、
輸液すれば心拍出量を増やす事が出来る可能性がわかったとしても、
どれだけ心拍出量があれば良いか?
という問題である。

心拍出量を正常値以上に高めても、必ずしも重症患者の予後改善効果がないという意見もあり、

A trial of goal-oriented hemodynamic therapy in critically ill patients. SvO2 Collaborative Group.
N Engl J Med. 1995 Oct 19;333(16):1025-32.



輸液反応性があるからといって、
輸液し続けるのも問題かもしれない。

輸液に関するスタンダードはどこに・・・?


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